どらどら

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マイ・バック・ページ(2011年製作の映画)
4.8
- まあ、生きてりゃいいよ

ある熱に動かされた時代があった
それが正しいのか間違っていたのかはわからない
でも、それを遠くから見ているだけなのが悔しかった
ただ「本物」になりたかった

その一点でのみ重なった革命家気取りとジャーナリスト気取りの邂逅
「世界を変える」という彼らの言葉はどこまでも軽薄で
真に社会に怒りがあるわけでも解決したい問題があったわけでもない
「本物」になりかけた彼らはその軽薄さが故に全てを失う

あのとき、あの浮浪街で
身元も名前も全てあやふやでも
ただ生きていたということ
それこそが「本物」であるのだ

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安田講堂は陥落し全共闘運動が尻すぼみになる時代
運動はあさま山荘事件へと向かい破局していく
それを指を咥えて見ていることしかできなかったものたちの物語
それはあの時代に生きていない僕にも共有される思いだ
「あの時代に、あの政治の季節に、学生運動に身を投げる」ものたちの魅力的なまでの躍動に、僕も魅せられ続けている

しかし映画はその「幼稚なセンチメンタリズム」を撃つ
「何かを変える」ことではなく「運動そのもの」が目的化したとき、その運動はいかに偽物になるか
「生きている」という真実を無視したとき、それはいかに軽薄なものになるか
映画は学生運動や暴力革命を否定するわけでは決してない
ただひたすら、彼らの運動の軽薄さを撃つ

翻って、この冷め切った、言葉が熱量を失ったこの時代に、僕はどう生きるか
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見事な映画だ
山下敦弘×向井康介×妻夫木聡×松山ケンイチ
実は岸井ゆきのが活動家役で出ていたり、演出助手が片山慎三だったりするのも今見ると面白い

忽那汐里の存在の意味がしこりのように残る
その意味を考えることこそ義務かもしれない
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