漱石枕流

アイガー北壁の漱石枕流のレビュー・感想・評価

アイガー北壁(2008年製作の映画)
4.4
私自身は、登山はまったくしない。しかし若い頃には、山岳文学を読み耽った。植村直己やラインホルト・メスナー、ハインリヒ・ハラーなど。これらの著書には本当の意味での冒険があると感じた。

ただ、体験がないのに文字を追うだけでは、その実際的な風景を頭のなかでリアルに再現することはできない。よって、本作のような映画はとてもありがたいのだ。

アイガー北壁はとても有名。ただ、私自身はこれの登攀記は読んだことはない。が、この山岳があるベルナーオーバーラント地域は旅行で何度も訪れているし、ユングフラウ鉄道にも一度だけ乗ったことがある。だから、興味を持って鑑賞した。

1本の映画として、たいへんおもしろかった! わかりやすく描かれているから、たぶん登山に興味のないひとでも楽しめると思う。最後までハラハラドキドキが止まらなかった。なにより、この舞台の特徴を生かしきっていると思う。もしこれがエベレスト登攀なら、あのように手を差し伸べることなんてできないわけだから。

ルイーゼ(ヒロイン)の件で言うと、ジャーナリズムの問題も描かれている。ただこれに関しては、責任が記者にそのままあるとは言い難い。ようするにゴシップ好きがパパラッチを生んだのと同じで、面白おかしい記事を好む一般市民に問題がある、としか言いようがないのだ。

彼女を演じた女優が好印象。調べてみたら、ヨハンナ・ヴォカレフという名前で、私が20年前に語学留学した街の出身だという。ひょっとしてどこかですれ違っていたかも? などと考えると楽しい。

[オリジナル音声+日本語字幕]2023/04/19 WATCHA
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