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ウォーキング・トールのFilmomoのレビュー・感想・評価

ウォーキング・トール(1973年製作の映画)
4.0
①実話の映画化ではなく、実在した人物をモデルにした話で、ノー・スター映画で典型的なB級アクションだが、観客の心を鷲掴みにして、怒りとその解消を繰り返し、感情を揺さぶる。『狼よさらば』(74)、『処刑教室』(82)などが作りが近い。ジョー・ドン・ベイカー一世一代の大仕事で、観客の感情移入を巧く引き寄せていた。これはノー・スター映画だからこそ成功したのだと思う。もし主演がチャールズ・ブロンソンやクリント・イーストウッドだったら、スター主義映画の1本になっていたことは想像つくが、それ以下でもそれ以上でもなかった、要するにスターの一連のフィルモグラフィの中の1本に終わっていた。②ノー・スター映画なので、逆に平凡な街で起きる陰惨な暴力がリアルに描かれる。悪人たちは、特に物々しい悪党面をしているわけではなく、悪の巣窟のクラブの女主人に至っては普通のおばさんである。そこに権力とつながった悪が脈々と存在していることの怖さがある。むしろ怒りを覚えるのは彼等を取り締まるべきはずの保安官や判事が癒着していることであり、この怒りの方が大きい。だが、この映画では主人公ビュフォードがすべての悪に対してことごとく鉄拳を喰らわせていく。このカタルシスが観客を魅了する。③映画的興奮はさておき、やられたらやり返す、徹底的に妥協しない、理屈の通らない奴には力でねじ伏せる、という今日のアメリカの縮図のような物語だった。世界の警察を自称する大国はこの一人の保安官に集約される。トランプ大統領の好きそうな作品だった。
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