一人旅

ウイラードの一人旅のレビュー・感想・評価

ウイラード(1971年製作の映画)
3.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
ダニエル・マン監督作。

孤独な青年に飼い慣らされたネズミの凶行を描いたパニック。

続編まで製作された異色の動物モノ。ヒッチコックの『鳥』(1963)や『フェイズIV/戦慄!昆虫パニック』(1973)『スクワーム』(1976)『ピラニア』(1978)『アラクノフォビア』(1990)など多種多様な大群系生物が映画界で活躍してきましたが、今回の主役はずばり“ネズミ”です。

内気で孤独な青年ウイラードが庭で見つけたネズミを飼い育てる内に大繁殖を遂げる。ウイラードの職場には傲慢で意地悪な社長がいて、ウイラードは彼に散々嫌がらせを受け、彼の中で少しずつ怒りが蓄積されていく。やがて決定的な出来事が起こり怒りの頂点に達したウイラードは、飼い慣らしたネズミの大群に命令し社長を襲撃させるが…という“青年の怒りの抑圧と暴発”+“集団動物パニック”を、本物のネズミを総動員したダイナミック&おぞましい映像で描き出した作品。

その他多くの動物パニック映画とは異なり、本作に登場するネズミの行動には飼い主であるウイラードの喪失と怒りに基づいた確固たる意思が作用しています。ウイラードの言葉を完璧に覚え、命令一つで軍隊のように忠実に集団行動するネズミたち。施錠されたドアをかみ砕くよう命令すればその通りに従いますし、喰い殺せの一言で人間を集団で襲撃する精鋭部隊。最強の力を手にしたウイラードは自分を苦しめた人間にネズミを使って復讐を果たしますが、罪悪感に駆られネズミを見放した結果、逆に今度はウイラードに対するネズミの復讐劇が幕を開けるのです。

ネズミたちは小さな鳴き声以外に言葉を発しませんが、驚異的な知能と明確な意思を感じさせます。特に、ウイラードの裏切りを目の当たりにしたネズミが彼を見下ろすその表情には、激しい憎悪の感情すら見て取れるのです。心理的に限界を迎えるウイラード(演:ブルース・デイヴィソン)の繊細な演技や傲慢で欲深い社長(演:アーネスト・ボーグナイン)のアクの強い演技も秀逸なのですが、画面いっぱいを埋め尽くすネズミたちも動物タレントとして最上位クラスの名演を魅せています。
一人旅

一人旅