ShinMakita

真夜中の刑事/PYTHON357のShinMakitaのネタバレレビュー・内容・結末

真夜中の刑事/PYTHON357(1976年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

☆mixi過去レビュー転載計画(刑事・警察洋画編)



〈story〉
オルレアン警察の刑事マルク・フェロー。今夜も愛銃パイソン357を手に、窃盗犯を逮捕した。偶然現場に居合わせた女流写真家シルヴィアは、その勇姿をフィルムに収め、アトリエのディスプレイに飾るのだった。ある日ディスプレイの前を通りかかり、クレームをつけたフェロー。それをキッカケに、シルヴィアに恋をしてしまう。パリとオルレアンを行き来する生活を送るシルヴィアと、多忙の身のフェロー。会う時は、オルレアンの駅で待ち合わせだが、サヨナラするのはいつも帰り道。シルヴィアは住居をフェローに絶対に教えようとしない。それもそのはず、実はシルヴィアは、フェローの上司・ガネ署長の愛人だったのだ。ある夜、フェローはシルヴィアを尾け、ついに住居であるマンションを突き止める。部屋に男がいる事を察知したフェローは、マンションの入口でシルヴィアを詰問、平手打ちを喰らわせてしまった。怒り心頭でその場を立ち去るフェロー。そのとき、右手袋を落とした事に気付かなかった。いっぽう、落ち込みながら、部屋に帰ったシルヴィア。彼女はフェローを本気で愛しており、ガネに別れを告げようと手紙を用意していたほどだった。しかし、部屋で待っていたガネと口論になってしまう。普段は温和なガネも、ついカッとしてしまい・・・灰皿でシルヴィアを撲殺してしまうのだった。

部屋を片付け、立ち去るガネ。その直後、酔ったフェローが再びマンションにやってくる。酒の力を借り、シルヴィアに謝ろうと思ったのだ。シルヴィアの部屋に入り、浴室に放置されたシルヴィアの死体に気付かないまま、フェローは「許してくれ、愛してる M」と置き手紙を残す。

翌朝、二日酔いで遅刻出勤したフェローに、部下メナールからの伝言が残されていた。そこには「シルヴィアという女の他殺体が発見された」とあった。ほどなく、現場検証を追えたメナールが帰署。彼が手に入れたのは、落ちていた手袋、置き手紙、靴跡、そして目撃証言。すべてはフェローに結びつくシロモノだ。シルヴィアとの交際は誰も知らないが、目撃者が彼を識別したら終わりだ! そう考えたフェローは極力現場に行かず、目撃者とも顔をあわせず、独自で真犯人を割り出そうと単独捜査を開始する・・・


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原題からして、そして冒頭のシークエンスからして、いかにもなポリスアクションを想起させます。しかし、内容は全くの予想外。しがない中年刑事が、殺人事件の犯人だと誤解されるのを怖れ、汲々とする話・・・そう、完全に「弱い男」の物語なんです。アメリカ映画では、こういう主人公は酒や麻薬に溺れたり、精神を病んでしまったりするのですが、彼は<ある物>に依存して何とかふんばります。「Python357」のタイトルの意味が、ここで生きてくるんですね。この弱い男が、唯一心を許せるもの、そして、自分の精神を正常に保ってくれるもの・・・それがこの拳銃なのです。しかしフェローは真実にたどり着いたとき、条件反射でガネを射殺してしまうのです。射撃場で練習を積んだ通りのあの抜き撃ちで・・・彼は、この唯一の親友の存在故に、さらなるドツボにハマっていくことになるんですね。そこに、このドラマの深み/味わいがあるのです。 Pythonが彼をどんな結末に導いていくのか、それは観てのお楽しみ。

私は、スーパー強盗事件の直前、静かに分解掃除をしているシーンが大好き。サイレンを鳴らしながら、フェローの家に近付くパトカー。彼はPythonを手に、すでに真実が露見したことを覚悟して肚をくくっているのです。あのモンタンの表情・・・たまらなかったなぁ…大傑作!
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