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カオス・シチリア物語のsonozyのレビュー・感想・評価

カオス・シチリア物語(1984年製作の映画)
5.0
イタリアのノーベル文学賞受賞作家ルイジ・ピランデッロが残した200を超える短編からの4篇を原作とするオムニバス。
序章からエピローグまで、美しい映像、個性豊かなキャスト、ペーソスとユーモア、いずれも面白いストーリー。
タヴィアーニ兄弟のシチリアとビランデッロ愛に溢れる名作です。

序章
卵を温めていたカラスを捕まえ逆さに持ち、卵を投げ付ける野蛮な男たち。まともな一人が彼らを止め「Musica!」と叫びながら、鳥の首に鈴を付けて空に放す。

そして、ピランデッロの故郷、シチリア島のCavusu(古代ギリシャ語Kaosの転訛)という名の森近くの田舎の村が舞台であることが伝えられる。

1.もう一人の息子
14年前にアメリカへ出た音信不通の息子二人に手紙(文盲のため代筆してもらっている)を出し続ける年老いた母には、近くで暮らすもう一人の息子がいたが、母は冷たく当たっていた・・・。母の遠い過去の秘密。

2.月の病
新婚の夫婦バタとシードラ。夫バタは満月の夜、狼男のように凶暴化する秘密を持っていた。その恐怖から実家に戻るシードラは、母に説得され、満月の夜は母が従兄サロと共に夫婦の家に滞在することになるが・・。太ももを出した足で雑巾がけするシードラのエロス。

3.甕(かめ)
オリーブ園が豊作で保存用に大きな甕(かめ)を手に入れた大地主ドン・ロロ。だが翌朝目覚めると真っ二つに割れていた。そこに秘伝のニカワで甕を修復する男がやってくるが・・。
一番コメディ色強め。笑えます。

4.レクイエム
村に墓地を造ることを禁じられた高地に暮らす人々。麓の地主に訴えに出向くが、憲兵に連れ戻される。そんな中、死期が近い村の長老は、村人に墓穴を掘らせ、死ぬのを待っていた・・。漂う可笑しみ。

エピローグ/母との対話
故郷の家に戻ったピランデッロ。亡き母が現れ、マルタ島に亡命した祖父を追って船で家族で向かった思い出のシーンが再生される。途中、休憩に立ち寄った軽石の島で、子供たちが白い粉の山に登り、美しい海に駆け下りていくジャケ写のシーンの美しさ!
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