名作の誉れ高い成瀬の遺作である『乱れ雲』を見たがピンとこず、そのことが少し寂しくもあったので、サイレント期の作品を探して見てみた。
とても面白かった。この頃から資本主義による核家族化と親の功利主義化(というか損得至上主義)が普通に映画のテーマになるくらい広まっていたことが分かる。そこに着眼して皮肉も込めて描くあたり、やはり後世、作家としての評価を得る人物の若き日の作品という感もある。
『乱れ雲』の劇中で盥の中で蛾が溺れかけているショットがあった気がするのだが、こちらでも一瞬、盥の中で蠅のような羽虫が溺れかけているショットがインサートされていた。どちらも死の印象のある不吉な感じのする場面だった気がする。『乱れ雲』では象徴主義的なやや安直なショットのようにも感じたが、こちらでそっくりなショットが出てきた時、およそ26歳の成瀬と62歳の成瀬が繋がって、強く、深く感動した。
『乱れ雲』の先の成瀬作品も見たかった。