スローモーション男

北京的西瓜(ぺきんのすいか)のスローモーション男のレビュー・感想・評価

4.5
 大林宣彦監督が日中友好の証として作った映画。

 千葉のとある八百屋が舞台で、そこに中国人の留学生たちがやってくる。主人公は嫌だったが次第に彼らと友情を結んで、段々と世話を焼いてあげる。

 大林映画のなかでは、平凡な作り出しカットめちゃくちゃ多いいつもの感じでなく、長回し多用してました。

 ベンガルともたいまさこという夫婦が本当に適役だし、出演している中国人留学生たちもとても良い。特にピンピンさん、美人です❤️

 最初は友好な感じで良かったのに、お父さんが段々世話を焼きすぎて、保証人になったりお金を貸したりして経営が悪化してく。そして家族も崩壊していきます。
スピルバーグの『未知との遭遇』と同じくお父さんが狂っていく映画でした…。

 でも途中で中国の留学生たちが八百屋の手伝いをしてくれるようになり、助け合いの精神で動きます。とってもほっこりします。この政治家とかではない、何でもない市井の人々、国も文化も違うなかで助け合うのがとても良いです。

そして極め付きが後半。夫婦が中国へ行くのだが…。ベンガルがカメラに向かって話しかける。
「ここは中国ではなく、東京のスタジオの中です。私たちは中国でロケできませんでした。」
そう、1989年6月に天安門事件が起きたせいで中国での撮影ができなかった。
現実が映画を遮ってしまったのです…。

だが、この映画はそういう点で、観た人たちに強烈な印象を残した訳です。
大林宣彦が生前言っていた『映画は嘘 でも嘘から出たまこともある』といえるのでは?

ある意味、日中友好というものを一番描くべき時に作られた映画なんだと思います。