りっく

ネイキッドのりっくのレビュー・感想・評価

ネイキッド(1993年製作の映画)
3.5
最初は人懐っこく、だんだん挑発的に、やがて度を越した悪意をもって相手を口撃する主人公。常に他者との摩擦なしにしか生きられず、その一方的な生きざまは暴力的なセックスにも露骨に現れる。

相手との関係に親密さや安らぎを感じた途端、天の邪鬼のように反発し、その場から離れてしまう。ヤマアラシのジレンマのごとく、孤独と苦悩を背負った難儀な生き方しかできない男に、母性をくすぐられる女性も確かにいるが、彼は甘えることができない。

恋人を探すスコットランド人青年、初老のビル警備員、カフェの女性店員との刹那的なやりとり。夜のロンドンで息づく孤独な人々の交感は、それでも安らぎを得れず、自ら壊してしまう。そして登場人物たちは来るべき交差地点に向けてスリルを高めていく。

身体中に怪我を負い、満身創痍になっても、他人の優しさに背を向け、足を引きずりながらあてどなく朝の街を歩き出す。そのあまりにも不器用で不格好な姿は、悲壮感とともにどこか清々しささえ覚える。
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