カタパルトスープレックス

復讐者に憐れみをのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

復讐者に憐れみを(2002年製作の映画)
3.9
パク・チャヌク監督による「復讐三部作」の一作目です。復讐の連鎖による悲劇を描いた作品です。

本作には「悪人」は出てきません。それぞれの環境で必死に生きている。必死が故に他人を巻き込んでしまうこともある。二人の主人公の一人であるリュウ(シン・ハギュン)は姉の病気を治すのに必死。もう一人の主人公でるドンジン(ソン・ガンホ)は不景気の中会社を立て直すのに必死。二人とも守るものがある。

本作で重要な鍵を握っているのがリュウの恋人ユンミ(ペ・ドゥナ)なんだと思います。ユンミには守るものがない。それでは、彼女は本作の中で何を表しているキャラクターなのか?そして、闇組織の親子。おそらく、ユンミも闇組織の親子も当時の社会が生み出した「澱」のようなものなのだと思います。本作では不幸な復讐の連鎖が起きる原因は明示されていません。でも、ユンミや闇組織の親子を描くことで隠喩として社会構造がその原因とは言わないまでも、要因であると主張しているんじゃないかと想像しました。

演技としてはソン・ガンホが特出していたと思います。最初はあまり特徴がなく、どこにでもいるおじさんな感じ。オーラが全く出ていない。ところが、物語が動きはじめるとだんだんキャラクターとして形作られてくる。もちろん監督の演出もあるのでしょうが、ソン・ガンホの演技があるからこその演出でもあったんだろうなと。あと、ペ・ドゥナはやっぱりかわいいなあ。すごく好きです。