Habby中野

ハイティーンやくざのHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

ハイティーンやくざ(1962年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

建設される街。人々の住む家屋を横切るトラックは幾度となくリフレインされる。そしてその内の一台に轢かれて人が死ぬ。土ぼこり舞う乾燥した世界が、赤切れのように傷つけられていく。水分の飛んだ混沌。
大人たちに裏切られ、絶望の世界を歩く次郎。その、まるで世界が死んだかのような─いや自分がもう存在しないかのようなあの寂しさ。そんな狂った世界でそれでもひた歩く若者の姿は、力強いが、やはり虚しさを帯びる。その虚しさは、幸福のようでいて、しかしカタルシスには程遠い結末にも表れる。壊したものが元には戻らないのと同じように、作り上げたものもまたそれ以前には戻ることができない。
「お前の傘にみんなを入れようとしてもむりだ。みんなを濡らさないためには、めいめいが一本一本傘を持たなければためなんだ」
それから60余念経った世界に自分がいることさえ、虚しい。
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