高橋早苗

モンドの高橋早苗のレビュー・感想・評価

モンド(1996年製作の映画)
4.5
・・・彼は 気に入った大人に聞く
「僕を 養子にしてくれる?」
大人は皆 一様にいぶかしむ
年はいくつ? 家はどこ?
・・・そんな問いよりも先に 彼は姿を消してる

彼の友達は皆 彼の笑顔に笑みを返す人
ホームレス 釣師 パン屋 大道芸人 郵便夫・・・
いつの間にか この町の住人となっていたモンド


廃屋だろうか 人気のない庭で彼が昼寝をするシーンが好きだ
気配を感じたロシアンブルーが耳をすます
庭のあちこちに置かれた石像の顔と 誰かの囁く声


尺八のような音が、妙に似合う。
雫の落ちる音まで聞こえそうで、じっと聞き入る。
うるさい外世界と、モンドが居る静かな世界の、境界線が見えそうで、ついジッと見入ってしまう。


・・・読み書きのできない彼に
釣師は石を削り アルファベットを教える

Mは 山のかたち
Oは 暗い空に出る満月
Nは ノン(名前のない) 手をあげて挨拶をする
Dは 半月のかたちをしてる
Oは 暗い空に出る満月

モンドは 自分の名前が刻まれた石を ポケットにしまい
繰り返しつぶやいて 初めて字を覚える


彼が笑みをなくし 野良犬のように拾われて
この町を去った後
身を案じていた老女は 庭に
モンドが 字を刻んだ石をみつける
「いつまでも たくさん」

ええ。本当に。
綱渡りの男フィリップ・プティを知った映画です。

モンドという子が
その笑顔に
笑顔で返してくれる人

ホームレス
釣師
パン屋
大道芸人
郵便夫
…たちと微笑み合う世界と

どこから来た、年はいくつだと
聞くだけで
彼の笑顔を見ず
交わろうとしない“外の世界”と

その世界の隔たりの間にあるのは
笑顔だ。
高橋早苗

高橋早苗