菩薩

革命の夜、いつもの朝の菩薩のレビュー・感想・評価

革命の夜、いつもの朝(1968年製作の映画)
4.0
「革命」それ自体が激しくドラマ性を有しているのだから、それにカメラを向けさえすれば必然的に面白い画が繋がる。不勉強故に何が何だか分からぬ事も多々あるが、ただこの五月革命にしろ、その後の日本に於ける学生運動の盛り上がりにしろ、多少憧れの目を持って眺めてしまうのは、彼らが理路整然と繰り出す「言葉」の力に惹かれるものがあるからである、彼らは「言葉」を知り尽くしている。と同時に皆が共通の行動理念を持ち、結果はどうであれ何かに向かい団結する様は非常に凛々しく映る。とは言えこう言った騒乱も、結局は保守層の圧倒的な「数の論理」の前では単なる藻屑となり、それらを増長させる餌としかなり得ない悲劇…と言いながら自分は別に左側に傾く気は一切ない。ただやはり昨今の「ヤバイ」で全てが片付く若年層の語彙力の貧困さや、ハロウィンを象徴とする目的意識の欠如と共に見られる精神性の幼稚化には懸念を抱かざるを得ないが、しかし時代と共に移ろいゆく価値観であったり時代感と言うのは、いつ何時もその様な物なのかもしれない、認めたくも理解したくもないが。にしてもヘルメットにタオルを噛ませゲバ棒を振り回す日本のそれと比べると、フランスは学生運動までお洒落でなんとも…女性闘士がこぞって可愛らしい…。言いようもない閉塞感に包まれながら、結局は諦観と今ある安定の元、屍のように電車に揺られる人々を見る度に、「何か、何かどでかい事が起きないのか…?」と、期待してしまう自分がいるが、この国でもはや革命が起こる事は、自分が生きているうちはあり得ないだろう。そしてまたいつもと同じように、彼らと同じ顔をして、いつもと同じ朝を迎えるのだ。
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