くりふ

美しき結婚のくりふのレビュー・感想・評価

美しき結婚(1981年製作の映画)
3.5
【爆走!言うだけ女番長】

先日見た『飛行士の妻』に続くロメール“喜劇と格言劇”シリーズ第2作。アマプラにて。

前作よりずっとわかりやすい面白さになりました。ヒロインの暴走一凶で乗り切った感。

自ら分泌した恋心ドラッグで、世界は自分を中心に回ると思い込んだヒロインが、理想の結婚相手と決めつけた男に婚活暴走するお話し。…ろくでもないが、ちょっとかわいらしい。

演技と演出を丁寧に編み上げているから、トンデモヒロインへの思いが反発で終わらない。ナルホドと感じる部分もあるし、どうしてこんな人物に育ったか、想像もひろがる。

ロメールの矜持は、そんなヒロインへの距離感ですね。意地悪なズームインで珍獣のように観察したりもするが、最後は日常に戻って、カラッと終わらせる。巧さが光ります。

彼女が運転する車の主観映像が、心の暴走に比例して早まるのも面白いし、ストーカー行為の行き詰まりが“後向きに流れゆく”電車からの窓外映像に反映される編集にも感心する。

全般、ヒロインのテンパリが、慌ただしくなるカット割りに反映しているんですよね。顔つきも、『ロボコップ』のミゲル・フェラーを思い出しちゃって。実際の女優さんは違うのでしょうが、ちゃんと見た目が傲慢に映る。www 実は、きめ細やかに設計していると思う。

恋愛感情なんていい加減、だとよくわかっている人が撮る映画かなと。物語を前後でサンドイッチする主題曲も、それが表われた、マヌケなピコピコ音で愉しくなります。

一方、ヒロインに“Stand by me”する女友達、アリエル・ドンバールが超いい役!どこまでも赦しと諦めwで寄り添う。彼女本人は当時29歳。で、ヒロインのベアトリス・ロマンは30歳!アリエルの方が超大人に見えるが、見た目以外の演技演出もやはり的確なのではと。

ちょっとヒロインを擁護すると、あのテンパリは女ゆえだよね。弁護士の余裕綽々…これはこれで傲慢…と比べると、ジェンダーギャップがジワってきます。80年代はこうだった。

いくら“亭主元気で留守がいい”と強がっても、“この仕事じゃ変な人も来るんです”…で片付けられてしまうとは!

まあ、恋愛感情なんていい加減、が証明されるハッピー・エンディングでしたが!www

<2023.11.29記>
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