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美しき結婚のhasseのレビュー・感想・評価

美しき結婚(1981年製作の映画)
3.9
○「夢想にふけらない人間がいようか 空想しない人間がいようか」(ラ・フォンテーヌ)

ロメール監督「喜劇と格言劇」二作目。
主人公サビーヌの根本には誰からも支配されたくない、相手より下の立ち位置に置かれたくないというワガママがある。
自分は個性的でクリエイティブな人間だと主張し、雇われの身を嫌がり、画家の愛人として振り回されるのを嫌って私も結婚する、などと言い出す。

親友クラリスが実は彼女が求めるもの全てを持った女性。なかなかにイタい性格のサビーヌだが、クラリスと仲良しなのが救いだ。サビーヌは彼女をクッションにしてなんとか人付き合いができている。

クラリスが紹介してくれた弁護士エドモンと結婚するという理想はあっけなく崩れるも、ラストの列車のシーンでは一人の乗客と、ロマンスを予感させる親密な目配せを交わす。彼は冒頭の列車でも座席に座っているショットが挿入されるが、サビーヌと同じカメラアングルで映され、サビーヌとの距離感、どこに座っているか判別できなかった。(駅についてからは早足でサビーヌを追い抜いていく)サビーヌと男性の同じ向きのショットの2~3回の繰り返しは非常に不可解な違和感を与えられるが、ラストに正常なショットに二人が収まることで、本来冒頭から始まるべきだったロマンスが、弁護士との紆余曲折を経てようやく正常にスタートする(であろう)ことを示唆する。そう、冒頭で二人が目配せにしくじったばかりに94分のうち90分くらいはずっと余計な物語を延々とやってて、ラストでやっと視線が噛み合い、本来のロマンスがやっとスタートできたわけだ。という変な見方もできる。
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