くまやぼのみまふさ

美しき結婚のくまやぼのみまふさのレビュー・感想・評価

美しき結婚(1981年製作の映画)
3.7
「オセロ」はイアーゴーの悪意が物語を展開させる原動力となっているが、「美しき結婚」の場合はクラリスの善意がそうである。サビーヌは愛人には恵まれているが、友人は医師の娘のクラリスただ一人で、医師と結婚したクラリスの何不自由ない生活はサビーヌが理想としているもの。こう言ってはなんだが、サビーヌとクラリス(&エドモン)とでは育ちが違いすぎる。所属する社会階級が違うのだ。二人の服装もそうだが、より分かりやすいのはクラリスの弟の披露宴パーティーとサビーヌの誕生日パーティーの違いだ。エドモンをサビーヌのパーティーに誘ったのはクラリスなのだが、なかば義理でやって来たエドモンのあの場での居心地の悪さは察するに余りある。一事が万事、クラリスのそういう善意が彼女の底の抜けた鈍感さによって繰り出されたことに、ロメールの悪魔的微笑みを感じずにはいられない。