アー君

乱暴者のアー君のレビュー・感想・評価

乱暴者(1952年製作の映画)
3.4
今まで見た作品からすれば、地味な内容ではあったが、用心棒の周辺に起きる男女間の問題が焦点になったためか、この映画が言わんとしていることである、居住における貸借トラブルをもう少し詰めて欲しかったがのが本音ではあったが、性的な干渉と肉を焼く描写の重ね方などのブニュエル節は健在であった。

立ち退きトラブルを地主が暴力で解決する方法は、どこの国でも起こりうる伝統なのか、バブル時代の日本でも当時は問題にはなっていた。ある意味で勉強にはなったが、住民側も団結をして徹底抗戦をするあたりは過激であり、悪循環を断ち切る道を探せねばとは思う。

男は非業の最後を迎えたが、これは戦後混乱期である日本で不良外国人を追い払うために、ならず者を自警団として雇った構図と似ていたが、使い捨てのように利用するやり方には憤りを隠せない。そしてラストシーンで地主の女房を睨み続ける鶏は、すべてを知り尽くしている観客のようでもあり、不穏な余韻を残すこととなる。

現在のメキシコは経済成長を遂げているが、いまだに根深い格差社会が原因とした貧困問題を抱えいる。雇用の改善や自給率の向上等が重要課題となっている。

〈スペイン・メキシコ時代のブニュエル〉
[シネマヴェーラ渋谷 16:10〜]
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