ひろ

風と共に去りぬのひろのレビュー・感想・評価

風と共に去りぬ(1939年製作の映画)
5.0
マーガレット・ミッチェルのベストセラー小説「風と共に去りぬ」を、ヴィクター・フレミング監督が映画化した1939年のアメリカ映画

第12回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞など9部門を受賞した

3本のフィルムを使ってカラーを再現するテクニカラーを使った初期の代表作であり、巨額の製作費と宣伝費をつぎ込む、ハリウッドスタイルの元祖となった作品。222分という長尺にも関わらず、大ヒットした不朽の名作。ちゃんと計算したら「アバター」よりも稼いでいる、史上最高のヒット作だ。

南北戦争を舞台に、南部の白人貴族社会の終わりを描いた作品で、恋愛映画というよりは、スカーレット・オハラという女性の生きざまを描いた女性映画だ。戦争前のスカーレットといったら、男はみんな自分が好きと思っている嫌な女。従来のヒロイン像からは逸脱している。しかも、彼女にアプローチしてくるレット・バトラーが、ちょい悪紳士ときたもんだ。このプロットにやられた。キャラクターの描き方が上手すぎる。

スカーレット・オハラの人生は波瀾万丈で、必ずと言っていいほど、成功したら打ちのめされる。しかし、南部の女は強い。スカーレットは何度でも立ち上がる。スカーレットは、理想的なヒロインではない。でも、何度も立ち上がる彼女から、いつしか目が離せなくなっている。「明日考えるわ」と言って、切り替えるスカーレット。彼女の全てを肯定する気にはならないが、彼女が映画史に残るヒロインなのは確かだ。彼女が立ち上がれる理由が、物語を深いものにしたと思う。

そんなスカーレット・オハラを演じたヴィヴィアン・リー。この役でオスカーを受賞したのは、当然と言っていい結果だが、そんなことより、スカーレットの人生とヴィヴィアンの人生がシンクロしていることに驚いた。早くに結婚して娘を授かったものの、娘より自分がスターになることが優先の野心家で、妻子ある人を好きになったり、転倒して流産してしまったりと、まんまスカーレット・オハラである。

レット・バトラーを演じたクラーク・ゲーブル。「キング・オブ・ハリウッド」と呼ばれた大スターだが、不適な紳士っぷり、意外にも子煩悩っぷりを発揮する姿に感動した。ゲーブルは若くして総入れ歯だったらしく、口臭がひどくて、ヴィヴィアン・リーはキス・シーンを嫌がったとか。

紳士だけど頼りない草食系貴族アシュレーを演じたレスリー・ハワード。この人もハリウッドのスターだったけど、戦時中に乗っていた飛行機が、誤って撃墜されて亡くなったという悲劇の俳優。この作品の良心であり、理想的なヒロインであるメラニーを演じたオリヴィア・デ・ハヴィランド。後にオスカーを二度も受賞した名女優だ。メイドのマミー役で、黒人初のオスカーを受賞したハティ・マクダニエルの名演も素晴らしかった。

南北戦争に敗れた南部を描いた作品ということで、戦後に初めて日本で上映された時、その似た境遇に共感し大ヒットした。当たり前のように黒人が奴隷として描かれ、奴隷制度を肯定した作品として、黒人や人権擁護団体などから批判される作品でもある。原作よりはオブラートに包んでいるみたいだけど、ハリウッドは人種差別を長い間してきた歴史があるから、そこだけ気になったかな。

それでも、4時間近い作品を最後まで飽きずに見せるのはすごいし、キャラクターの魅力も合間って、不朽の名作と言われるに値する作品になっていると思う。いくらなんでも不幸を畳み掛け過ぎだと思ったものの、そのつど立ち上がるスカーレットの表情は、きっと忘れることはないだろう。
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