桃子

風と共に去りぬの桃子のレビュー・感想・評価

風と共に去りぬ(1939年製作の映画)
5.0
「運命のいたずら」

レビュー250本目は何にしようかと考えた末、この超有名な名作映画に決めた。
アメリカでは、動画配信が停止されているという。日本ではそうならないとは思うが、久しぶりに再見することにした。最後に見たのはいったい何年前だったのか、もう記憶もさだかではない。
この物語のヒロインであるスカーレット・オハラという女性は、非常に“個性的”なキャラクターである。長尺すぎて原作は未読なのだけれど、本は持っているし、初めの章の途中くらいまでなら(笑)読んだことがある。その後、手っ取り早く(といっても、3時間42分あるが)映画を鑑賞して、こういう話だったのか~~となった。自分が若かった頃の印象は「なんてイヤ~な女なんだ!」である。それが見る年齢とともに変わっていくような気がする。スカーレットは、ただ単にイヤな女だけではなくなるのである。これは実に不思議なところだ。
私は小説家の森瑤子さんが大好きで、よく彼女のエッセイを読んでいた(小説本体はあまり読んでいない。森さんごめんなさい)。森さんはこの物語が大好きで、10代、20代、30代と、歳の節目ごとに読んでいたという。そしてやはり読むだびに印象が変わったと書いてあった。好きが高じて続編である「スカーレット」の翻訳までやっている。これは評判が悪いので未読だけど…(^_^;) ちなみに森さんは50代で亡くなってしまった。ほんとに残念…
今の歳になってあらためて見たスカーレットはたしかにイヤな女だけれど、強い生命力が素晴らしくて、やっぱり根性のある人間はいいなあと感じた。感じ入った、という方が近いかな。彼女は根性があるし、何より前向きなのである。有名なラストシーンの台詞にそれが現れている。
Tara! Home. I'll go home. And I'll think of some way to get him back. After all… tomorrow is another day.
(タラ!そうよ、おうちに帰るのよ。それからレットを連れ戻す方法を考えましょう。明日は今日とは違う日になるわ)最後の部分は、「明日は明日の風が吹く」という和訳でも有名である。
私が一番好きな台詞は、この直前の一言である。
I can't think about that right now. If I do, I'll go crazy. I'll think about that tomorrow.
(今は考えられないわ。頭がおかしくなりそう。明日考えることにするわ) この「明日考えよう」という言葉にエネルギーをもらえる気がする。私は嫌なことがあって落ち込んでも、一晩寝るとたいていケロっとするタイプなので、この言葉は実感としてわかるのである。
スカーレット役の女優がなかなか決まらなかったのは有名な裏話である。たまたま撮影現場に見学に来ていたヴィヴィアン・リーに白羽の矢が立った。オファーを引き受け、撮影に入ったが、脚本を読み進めていたリーは「こんなメス犬みたいな役は自分にはできない」と言い出して、一旦降板したという。メス犬?!このエピソードには苦笑してしまった。スカーレットという女性は、要するに典型的な“同性に嫌われるタイプ”なのである。演じていたリー自身がこんな女を演じるのは嫌だと思うのだから、相当なものだ。だが、彼女はセルズニックに説得されて撮影現場に戻ってくる。もし説得できなかったら、この映画はどうなっていたんだろう??リーの決断に感謝するしかない。
ところで、リーがハリウッドに来た理由というのも興味深い。Wikiによると「『嵐が丘』で主役を演じたローレンス・オリヴィエとマール・オベロンは、両名ストレスでイライラしており終始いがみ合っていた。オベロンは『オリヴィエが大嫌いだ。キス・シーンなんて想像するだけでゾッとする』と漏らしており、オリヴィエは『オベロンが気に入らない。彼女がどうしたこうした』とロンドンの舞台に立っていた愛人のヴィヴィアン・リーに手紙で愚痴もこぼしていた。それを読んだリーはいたたまれなくなり、舞台をすっぽかして大西洋航路の客船に飛び乗り、大陸横断鉄道や航空路を経由して、ロサンゼルスへやって来た。また、その頃『風と共に去りぬ』が、主役であるスカーレット・オハラ役の女優が決まっていないままアトランタの火災シーンから撮影が開始された。しかし、製作者の弟であるプロダクション・マネージャーが撮影現場の見物人の1人であったリーの炎に赤く輝く横顔を見て『スカーレットは決まりだ!!』と直感し、思わぬ形でリーは大作の主役に抜擢された」
先日、「嵐が丘」を見たが、主演のふたりがそんなにいがみ合っていたと知って驚いた。(レビューはこれから書きます)。嫌いな相手役ともラブシーンを演じなくてはならない俳優さんって、大変な商売なんだなあ… オリヴィエとオベロンが仲良く共演していたら、リーはハリウッドに行かなかっただろうから、運命のいたずらをひしひしと感じてしまう。
監督はヴィクター・フレミングで公開年度は1939年、ということは「オズの魔法使い」と全く同じである。オズは8月公開、こちらは年末だった。なんとまあ売れっ子だったことか。両方とも破格の予算で作られているし、映画は大ヒットしている。今でも名作映画のランキングに必ずランクインする傑作と言われる映画である。当時のハリウッドがいかに凄かったか納得してしまった。
映画好きなら誰でも1度は見る映画だろう。時を置いて見ると違う印象になる典型的な作品だと思う。また数年後に再見したい。
桃子

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