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風と共に去りぬのkomoのレビュー・感想・評価

風と共に去りぬ(1939年製作の映画)
5.0
【古き日への追想、そして明日】

Filmarksレビュー、ようやく200本目になりました。いつも読んでくださる方、本当にありがとうございます(^^)
200本目は、ずっとレビューできずにいた大作を。
学生時代に父にゴリ押しされ、DVDで初鑑賞。その後、午前十時の映画祭にてスクリーンで観る機会に恵まれました。
いずれの機会でも、観終えた後までずっと脳裏に焼き付いたのは、陥落させられたアトランタを焼き尽くす真っ赤な炎の光景でした。スカーレット・オハラの激情と、その壮絶な人生を表すような色。
同じ画面の中には、スカーレットに愛を告げ、前線へと旅立つレット・バトラーの姿もあります。
神出鬼没なレットからのアプローチ。そして幾度となく彼の心を手に入れるスカーレット。しかし、スカーレットがどれほど叫ぼうとも彼が戻らないシーンが2度あります。そのうちのひとつがこの炎のシーンです。
ポスターにもなっているだけあり、この作品のメッセージ性を克明に表す光景でもあります。

本作の特徴として挙げられるのは、まず第一にスカーレットの気性の激しさであり、本能の赴くまま傍若無人に生きるその姿は賛否両論。
しかし物語の軸としてひとつ言えるのは、『失われた南部を悼む物語』の主役として、『古き良き時代の南部が生んだ女』の象徴として描かれていることです(当時の奴隷制のことを鑑みると”良き”という言葉には語弊がありますが、作品のメッセージ上あえてそのように書いています)。

土地を愛し、自由な恋に燃えていたスカーレット。一時代が過ぎ去り、愛する者が全て去っても、”明日は明日の風が吹く”といい、希望を捨てないスカーレット。
時代や生活は変わるものですが、生まれ持った高潔さを捨てず、在りし日を強く思う心こそがその作品の描きたかったテーマであるのだと思います。

今の時代から見れば、かつての南部は黒人奴隷制度が大問題であり、その制度があることを前提とした産業が発展し続けていたらと思うと空恐ろしさがあります。
また、先日『それでも夜は明ける』のレビューでも触れましたが、現代において『風と共に去りぬ』は規制対象となりつつあります。

しかし、ポリコレ的な思考も大切ですが、やはり映画は在りし日のままにしておいてほしい気持ちが大いにあります。
現代に生み出されている作品も、数十年経てば規制対象になるかもしれません。そう考えると、創られた作品を現在進行形で楽しめる”今、この瞬間”というのも、映画を創り上げる芸術の一部だと思えます。

色々と複雑な問題も孕む本作ですが、やはり200分超えの上映時間が嘘のように短く感じられる脚本は素晴らしいですし、ひとつ、またひとつと大切なものを失おうとも、己を信じて明日を目指すスカーレットの姿には勇気をもらえます。登場人物の中では、聖母のような優しさの中に鋭い強かさも持つメラニーが最も好きです。

『明日は明日の風が吹く』
この映画を観るまでは、なんて楽観的でいい加減な言葉だろうと思っていました。
しかし本作では、明日の身をも知れない不安と悲しみに晒された人物の言葉でした。
いつの時代の人生でも、明日何が起こるか誰にもわからないのは皆同じ。
明日という日は、今日とは違う日。
人生の大きなテーマを描いた作品だからこそ、今なお鮮やかなのですね。
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