黄推しバナナ

HAZE ヘイズの黄推しバナナのレビュー・感想・評価

HAZE ヘイズ(2005年製作の映画)
4.0
海獣シアター PRESENTS

塚本晋也 FILM

狭いコンクリート空間に閉じ込められた男の密室劇スリラー映画。

私は密室劇スリラーでは無いと思っている…塚本晋也監督の作品はそんな単純では無い…物語の解説の後に私の考察を書き残す事にする…

【第1ステージ】
目覚める男(塚本晋也)
薄暗いコンクリートに囲まれた体ギリギリの密着された狭い空間
顔のアップ
うろたえた表情
その瞬間、暗い空間に後ろ向きに引きずり込まれる
漆黒の闇
「HAZE」
タイトルロゴ
【第2ステージ】
寝返りが多少困難な暗い空間で気付く
寝そべっている
脇腹が痛む
脇腹から血が滲み出ている
這いつくばって暗い空間を進み続ける
狭苦しい
【第3ステージ】
気が付いたら頭を上下左右に動かせられない
頭の後ろにはコンクリートの壁
口には猿轡状態のパイプライン
パイプラインは壁沿いに設置され暗闇の彼方まで続いている
顎を今の状況以上に開くことは困難
頭を後ろに下げることも困難
つま先立ちの状態で体を動かして反転すことも困難
踵を下ろすと鋼鉄の棘
痛みを伴う
手で掴むところには有刺鉄線
さらに痛みを伴う
右の通路に進む事ができる
少しづつ横にスライドさせて進んで行く
痛みを伴う手
猿轡状態のパイプラインを歯を削りながら進む
キリキリ音が響く
ストレスが上がる
行き止まり
逆方向を試してみる
猿轡が取れ更に踵が下ろせる大人一人分の空間に辿り着く
視線が真正面の壁の上に向く
壁には縦長の長方形の穴が
ガコン x 3
コンクリートを削る音と欠片が飛び散る
次の瞬間漢の頭にハンマーが振り落とされる
ドス x 15
鈍い音が響く
男はお尻のあたりに抜け穴がある事に気が付く
お尻から穴に入りハンマーの攻撃から逃れる
くの字に前屈姿勢のまま後に進む
突然坂になり滑り落ちる男
逆さ吊り状態になる男
両手で落ちるのを踏み止まる
頭元には鋼鉄製の棘
痛みが伴う
力ずくで坂を登る
途中左に覗き穴がある事に気付く
その穴の奥には悶え苦しむ三人の若い男(村瀬貴洋、神高貴宏、辻岡正人)
天を見上げて拝んでいる
次の瞬間肉塊に
若い女(さいとう真央)が泣き叫ぶ
次の瞬間肉塊に
力ずくで坂を登りきる
落ちた穴の向こう岸に逃げる
暗い空間を匍匐前進で逃げるように進む
意識が朦朧としている
幻覚(鯉、さざ波、小人)
疲労で気を失う
【第4ステージ】
「ごめんね」女性の声
目が覚める男
力を振り絞って匍匐前進
下に降りる穴を見つける
下に降りて匍匐前進で進む
異臭がする
力尽きた屍が転がっている
その中に女(藤井かほり)を見つける
女も脇腹から血が滲み出ている
女は出口を知っている
出口の通路にはバラバラになった屍と溝に溜まった血の池
男は行く事を引き止める
女は行くことを決断する
男も行く事にする
屍と血の池の溝を進む
後ろから聞こえる悍ましい唸り声
通路の行き止まりに当たる
血の池を潜って進まないといけない
女は潜って進む
男も決心して進む
息が持たない
浮上する
人一人入れる煙突状の空間に辿り着く男
そこには女は居ない
上を見上げたら蓋の隙間から微かな光が漏れている
男は手足を使って登る
頭で蓋をこじ開けて出る
意識を失った男
【第5ステージ】
気が付いた男
キッチンに血塗れで倒れている男
女性の手が見える
女は別の場所から出ていた
血が滴り出ている女
這いずりながら近寄る男
記憶が蘇った
「本編参照」
119番に電話する男
【第6ステージ】
定かでは無いが30〜40年後、年老いた妻(藤井かほり)の写真立てが映る
ソファーから立ち上がる年老いた男(塚本晋也)
年老いた男は屋上へ
燦々と輝く太陽
干された白いシーツ
干された白いシャツ
干された洗濯物に囲まれる年老いた男
太陽を見上げる年老いた男
花火を二人で眺めている男と女の回想シーン
漆黒の闇
「HAZE」
鐘の音が鳴る
エンドロール


【考察】
この作品、閉鎖された薄暗い空間を彷徨い続けて正気が戻った時のオチで…つまらない…と思っている方…全体の9割位だろう…
世の中の現実…人間の本質…本性を抉り取り公然の場で露わにする…それが塚本晋也監督ですよ…
そんなストレートでは無い…

【第1ステージ】
いわゆる男女のあれですよ…
男(塚本晋也)は精子ですよ…
奥に進むわけですよ…
【第2ステージ】
幼児期ですよ…
二本の足でまだ立ち上がる事が出来ない這いつくばる事しか出来ない…
【第3ステージ】
青年期〜成人期ですよ…
二本の足で立って社会の荒波に揉まれるわけですよ…
発言も大人たちに聞き入れてもらえず…
地に足がつかず…
社会人になって地に足がつく時期になっても大人たちに頭を押さえつけられる…
競争社会から脱落する人も…
それを目の当たりにするわけですよ…
自分自らも挫折して坂を滑り落ちたり、そこで踏ん張ったり登ったり…
ストレスマックスですよ…
夢の心理では、
鯉=窮屈な空間でストレスを溜めている
さざ波=自由に不自由のはざまにいる
小人=未発達、未熟な自分
【第4ステージ】
壮年期ですよ…
人生の出口(最後)までのパートナーを見つけるわけですよ…
二人で先ゆく困難な道を行くわけです…
【第5ステージ】
そこで待ち受けた現実です…
結果は本編参照で…
【第6ステージ】
老年期ですよ…
「屋上」
上に旅立つわけです…
「輝く太陽、白いシーツ」
天国へと…
「男と女の回想シーン」
美しい夫婦の記憶と共に…


密室劇スリラーにした方が大勢の人に見てもらえるから形を変えて作品にしているのだと思う。
※密室劇スリラーとしての解釈は、
冒頭の漆黒の闇から浮かぶタイトルロゴ(HAZE)の「H」の文字は地獄のhellを意味しているのだろう。
ラストの漆黒の闇から浮かぶタイトルロゴ(HAZE)の「H」の文字が青く変化するのだが天国のheavenを意味しているのだろう。
地獄から天国までを脱出密室劇スリラーとして描いているのだと…

私は密室劇スリラーでは無いと思っているのだが…裏設定は主人公(男)の一生の人生…そう言ったメタファーが詰まった作品だと…

タイトルにもなっている、ヘイズ (haze) とは、現代の気象用語で、乾いた微粒子の浮遊により視界が悪くなる煙霧を意味する。
塚本晋也監督は、先の人生の視界は見通しが悪い=未来は誰も不透明(霧がかかった状態)と言いたいのだろう。
だからタイトルが「ヘイズ (haze)」なのだろう。私は作品を見終わった時にそう感じ取った。

①鑑賞年齢30代
②心に余裕鑑賞なし
③思い出補正なし
④記憶明確
黄推しバナナ

黄推しバナナ