こたつむり

F/X 引き裂かれたトリックのこたつむりのレビュー・感想・評価

F/X 引き裂かれたトリック(1986年製作の映画)
3.5
新聞の見出しに「春の土曜ワイド劇場スペシャル!偽装殺人・狙われた映画業界のトリック!陰謀に秘められた真相を暴け!」なんて書かれそうなサスペンス。

某ミステリ作家オススメ!
…ということで鑑賞しましたが、これは掘り出し物。80年代ならではの“粗さ”が目立つ演出でしたが、それを差し引いても面白い着想でした。

主人公は映画の特殊効果を生業とする男。
素晴らしい技術を持つがゆえに“ある事件”に巻き込まれて追われる身になる…というのが大まかな流れなので、主軸は逃亡劇。副題にある“トリック”に絡むハウダニット物ではありません。

しかし、この逃亡劇がなかなか面白いのです。
主人公が自身の潔白を示すために、特殊メイクや小道具などを駆使するのですが、リモコン操作で血糊を爆発させたり、発煙筒を用いて追跡者を撒いたり…と映画好きには堪らない展開が続くのです。特に車に積まれている××の使い方は…唸るほどに見事でした。

ただ、それでも80年代の作品ですからね。
どうしてもノリが軽薄なのですよ(音楽もシンセ音バリバリ)。特にヒロインの扱いは…余りにも可哀想。というか、彼女がヒロインなのかどうか…という部分からして疑問です。

また、その他のキャラクタも無色透明に近く。
主人公ですら「彼がどんな人物だったのか?」と鑑賞後に問われても困るほど。あえて言うならば…白いブリーフ姿が印象に残っているくらいですかね。マダム層に向けたアピールはバッチリでした。

そんな登場人物の中で。
唯一、活き活きとしていたのは《レオ刑事》。
同僚を殴るわ、部下にキスをするわ、上司のバッジを盗むわ…とやりたい放題でした。そんな彼を演じたのは『ランボー』で保安官役だったブライアン・デネヒー。納得の配役ですね。

まあ、そんなわけで。
傑作とまでは言い難いが、見逃すのは惜しい作品。低予算でもアイディアひとつで面白い物語が作れる…という好例ですね。80年代の緩さを承知の上で鑑賞すれば楽しめると思います。
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