シートン

雨に唄えばのシートンのレビュー・感想・評価

雨に唄えば(1952年製作の映画)
2.8
ショーとしては面白いが、ストーリーは勧善懲悪的であり、面白みに欠く。それは単にわたしがミュージカルの魅力を理解してないことによるのだろうが、早送りしたくなるほどに退屈だった。

この作品は、トーキー革命がもたらした映画界の激震を描いているという点で、史料的な価値を有している。リーナのように声が良くなかったり、声が無声映画で作り上げられたイメージに則していないせいで、突然仕事を失った俳優も多かったのだろう。キートンもトーキーの登場でその煽りをうけた一人であると聞く。

このような革命的な事件は、イノベーションが無慈悲なまでに業界の勢力図を書き換え、それまでとまったく異なるゲームを始動させてしまうことを示している。それにも関わらず、無声映画のスターの転落劇を、あたかもその人間性の愚劣さや役者としての無能さのみに帰することで、このテクノロジーの変化による暴力的なまでの地殻変動を単純化し、卑小な勧善懲悪劇に仕立てているという点に、この作品の罪悪がある。

最後までこの作品の魅力を見出せなかった。
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