ハマジン

カミュなんて知らないのハマジンのネタバレレビュー・内容・結末

カミュなんて知らない(2005年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ラスト、虚実の皮膜が溶解していく異形の「殺人シーン」は、数ある映画の中でもトップクラスの恐ろしさ。それまでの1時間40分はすべて前振り。「カット」の声がかかっても止まらない、ガラス1枚隔てた「向こう側」の世界。トンカチで何発も殴られ叫ぶ老婆の「いたぁーいっ!あーいたいいたいいたーいっ!あいたたたたた!やだやだやだやだ」と、思わず耳をふさぎたくなる生々しい声。殺人者が吹きこぼれそうな鍋にふと気づき、途中でガスを律儀に止める仕草も、リアルに厭なディテールとして記憶に残る。それまでの手持ちとクレーンを駆使した浮遊感のある撮り方とは対照的に、ひたすら端正なショットの積み重ねで堅実に撮っていくのも怖い。
マーラー5番のパチモンみたいな編曲の劇伴の中、本田博太郎演じる教授=アッシェンバッハにわざわざ化粧までさせるほどパロディを徹底するのなら、終盤屋上を徘徊する狂気の吉川ひなの=アデルにはちゃんと眼鏡をかけさせるべき。
ハマジン

ハマジン