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Little Birds リトル バーズ -イラク 戦火の家族たち-のBaadのレビュー・感想・評価

3.5
最悪の場合報道用に撮ったフィルムを再編集しただけ、という出来である可能性も予想していたので、あまり気乗りはしなかったのですが、4本まとまって気になっていた映画が同じ日に同じ場所で上映された(しかもレディースデイ!)ので、上映終了後レンタルする事はまず不可能だと思って思い切って見ました。見て良かったと思います。

まずこの映画が食事の場面から始まっていることに好感を持ちました。多分特に貧しくも豊かでもない中東の普通の食事。これで報道用の映像を延々と見させられているという味気なさからは少なくとも救われました。

イラク戦争当時はテレビに釘付けでしたから、この映画で見た映像一部は既に目にしているはずですが、時系列につなげてみるとやはり捕らえることの出来なかった部分がかなりあることに気づき、この戦争について疑問に思っていた部分の一部を理解することが出来ました。撮る対象として選んだ3人の子供を亡くした男性の人柄がよかったし、フセイン逮捕の映像を見る街の人の様子を捕らえたシーンはインパクトがありました。

映っているイラクの人々は本当に普通なんですが、この普通さは日本で中東系の人たちに接して他の国の人たちと較べて感じるイラク人の普通さと一緒ですから、多分非常にニュートラルに冷静に対象を捉えているのでしょう。作家性のある作品になっていなくても、対象と接している時間そのものがある種の力となっているのだろうと思います。

それにしても、またしても、というべきでしょうか、今回も、そもそも産油国で、財政的にも豊かで教育レベルも高かった(いまでもそこそこは高そうである)はずなのにこのような状態に甘んじていた、そのイラク人自身の失敗の原因や責任を自ら問う映像も言説もイラク人からも撮る側からも出てきていませんでした。長い間独裁が続いていたとはいえ、そう遠く無い過去に二度も侵略戦争を仕掛けた国で、既に言論の自由はあるのですからとても不思議なことだと思います。(←この最後の段落は映画を見た2005年の現場で書いてあります)
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