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Little Birds リトル バーズ -イラク 戦火の家族たち-のしのレビュー・感想・評価

4.2
講義で。最近投稿してるドキュメンタリーフィルムは全て講義で見てるものです。正直、見終わったあとのディスカッションでなかなか言葉が出なかった。映画を見ているときもずっと涙が出続けていたし、今こうやって間を空けて言語化して文章として出力している時点でも視界が滲んできている。

監督も言っていたけれど、我々が映像と向き合う際、まずなによりも大事にすべきなのはその瞬間に生まれた感情なのだと思う。感情というものはあまりにも言語化しにくいけれど、実はその重みというか程度と広がりが意外と把握できるものなのではないかと思う。そして言葉は無力なのだという点、文節化することでは捉えられないものの存在をはっきりと認知させる。そういった点でこの映画は感情の重大さに寄り添った映画だったと思う。加えて、ドキュメンタリーの真髄であるところの即興性が非常に出ていたのが本当に一観客として嬉しかった。撮影者が、タンクに向かって一人向かっていった女性の話を聞いて、病院に取材しに行ったところからこの映画は動き出している。現実の流れが、そこに生きる人がカメラが次に追うべき対象を示しているところに、ドキュメンタリーであることの大きな意味を見出したいし、外部からの働きかけとそこへのリスポンス(監督はリアクションと言っていた)から生まれる紛れもない「リアル」を映すことに成功した点でこの映画は素晴らしい。
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