キャッスルグレンギャリ

男はつらいよ 柴又慕情のキャッスルグレンギャリのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 柴又慕情(1972年製作の映画)
4.0
U-Nextで鑑賞。9作目にして吉永小百合がマドンナとして登場。日活の大スターの彼女を招聘できたことは本シリーズがいよいよ松竹のドル箱になったことを示していると思います。まだ垢抜けないところもあります(倍賞千恵子の美しさの方に筆者としては惹かれます。)が暖かみを感じさせる美しさは全盛期に入った寅さんが振られる対象としては抜群と思います。後の作品で再登場するのも頷けます。

本作はマドンナ登場のタイミングも遅すぎないし、出会うことになる旅のプロローグ部分の長さもバランスが取れていました。「第三の男」のようなチターのBGMも良い。甘いときが終わって寅屋でのドタバタがはじまる落差もいい感じ。メインキャストたちの台本には書いてなさそうなちょっとした仕草、表情も油が乗ってきたと感じました。おいちゃんとして初登場の松村達雄も馴染んでいるし。

ところで「女の勘は鋭い。」というけれど本作では「女は鈍感。」と思わざるを得ません。こんな態度を示したら寅でなくても勘違いしてしまうでしょう。男性が書いた脚本だからこうなるのですかね。

子供が独立してしまって妻を亡くし一人侘びしく暮らす二人の父親が「七人の侍」(博の父の志村喬と歌子の父の宮口精二)であるのが笑えました。