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マイ・マザーのyksijokiのレビュー・感想・評価

マイ・マザー(2009年製作の映画)
4.1
これはパラドクスだ。
母を愛せないが 愛さないこともできない。


母と息子、愛し合っているのに愛しあえない2人。
通じ合っているのに通じ合えない2人。
理解しようとしているのに理解しあえない2人。

この悲しい心情とすれ違う様が非常に辛い。離れたり近づいたりする部分が100分間ずーっと続いていて本当に辛い気持ちになった。人の親なら、人の子なら1度は感じた経験のある心情や関係性や、愛をしっかりと自身の体験をもとに描いている様が非常に心にズシンと来た。

息子のある種マザコンかというぐらいの愛と健気さがグッとくるし、理解しようと最大限努力しようとする母親の辛い心情がとても辛かった。

ドランは相変わらず表情の撮り方が本当にかっこよくてホント好き。2人の対話を横並びのカットに収めるシーンがすごい良かったし、それぞれを抜いたショットと横並びにカットに収めたショットもとても良かった。モノクロで母親への気持ちを語る時のアップのドランの表情もすごく良かった。

色の使い方もはっきりとしたコントラストを今作でも使っていて赤や青の色味の使い方がめちゃくちゃ良かった。差しこまれる映像の数々もとても良かった。現実に起こらない出来事を唐突に挟むことで心の中を表現している様がめちゃくちゃ刺さったし、心が音を立てて崩れていくとか、絶望が波を打つように襲ってくるみたいな心情を数秒のカットでパンっと入れてくるところがめちゃくちゃに良かった。

ストーリー全体の凹凸はそこまでないしそれぞれの時間的経過もそこまで長くないだけにラストの岩場でのシーンとビデオを見た時の母親の表情がやはり印象に残ったというかもうそこだけで嗚咽出そうになるぐらい泣けた。

違いを理解することの難しさと自分の気持ちをぶつけあうことの大切さみたいなものを描いていると思ったし、激情的になることで違いが理解し合えることの大事さみたいなものを感じた。
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