イペー

マイ・マザーのイペーのレビュー・感想・評価

マイ・マザー(2009年製作の映画)
3.8
我がママはワガママ!

監督、脚本、主演、グザヴィエ・ドラン。世界が注目する若き天才監督のデビュー作。母と息子の愛憎を描く半自伝的なドラマ。

エモーショナルな作品だとは思うんです。
かといって感性だけで突っ走るワケでもなく。これが19歳の作品である、というのが最も恐るべき事実。

主人公ユベールの未熟さと、完成されつつある美意識。
母親を含め、他者との距離感を掴みかねている彼の心情を表すかのように、窮屈な画面が続きます。

基本は会話劇なんですが、どこかユーモアを漂わせて、ドラン君の才気が迸ってます。横並びの会話が印象に残る。
要所で自覚的なんだもの。…19歳?

思いの外、ストレートなお話。
ユベールは同性愛者ですが、母と息子の物語として、普遍性を持っています。
母親の聖と俗。感受性の豊かなユベールは、成長とともに、その矛盾に直面しています。

母の支配から逃れたい、でも逃れられない。愛情の楔に苦悩するユベール。
繰り返される親子ゲンカ。
思春期特有の、自意識に振り回される青年の姿。ドラン君、…いや、ドランさんの演技もチャーミングです。

このくらいの年齢って、ホントに繊細で、傷つくことしか能がないんですよねえ…。
自分がそうだったから…ってことも、無いか…。何も考えてなかったわ。

時折インサートされるイメージカットが、彼の心象をダイレクトに表現しています。
照明や美術とともに、ドランさん…いや、ドラン先生のセンスが炸裂しています。

ラストシーンは素晴らしいですねえ。
二人にとっての思い出の場所で、それまでの密着した親子関係が、外に向かって開かれていく。
甘やかなノスタルジーと、未来への展望が画面に共存してるんですね。
余計なセリフを挟まずに、ワンシーンで表現。…19歳‼︎

…遅ればせながらの初ドラン監督でした。
改めて凄い才能だな、と。若いのに…。
長い反抗期が継続中の自分ですが、とりあえず母に土下座して謝ろうと思いました…。
イペー

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