ーcoyolyー

女帝 エンペラーのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

女帝 エンペラー(2006年製作の映画)
3.6
「ハムレット」を翻案したはずが何故か最終的にオフィーリアがジュリエットになってて「ロミオとジュリエット」と化していた。

オフィーリアをこういう解釈でこういう人物造形にするのはあの時代の女性蔑視から解放していて現代的でいいんだと思うんだけど、肝心のガートルードがガートルードとしての迫力がなく宮崎あおいの演技バリのカマトト寄りで、でも突き抜けてなくて新しい解釈まで到達してなくて、ガートルードを主軸に据えるという発想や着眼点は良かったのにうまく落とし込めてない印象でした。

やりたいことわかるんですよ、黒澤明が翻案したように俺らもシェイクスピア翻案したい!グリーン・ディスティニーとかHEROとかLOVERSみたいなワイヤーアクションやりたい!チャン・イーモウに続け!ワダエミみたいなゴージャスな衣装デザインして!とかわかるんだけど全部野暮ったい、垢抜けない。ライティングの問題なのかな、撮影監督のセンス?やりたいことに対して画面明るすぎない?撮り方をもっと陰影ガッツリつけたらこんなに安っぽくならなかったんじゃない?これ映像美で勝負するタイプの映画狙ってたような気がするんだけど制作時に横槍入ったのかな。音楽担当にタン・ドゥンやラン・ラン連れてきてるのだけでわかるようにめちゃくちゃお金かかってるのにこの安っぽさが勿体なさすぎて。

こんなんなるならチャン・ツィイーにガートルードとオフィーリアの要素潔くまとめて一人にしちゃえばよかったんだよね。中途半端にオフィーリアぽくしてオフィーリアがオフィーリアじゃなくなっちゃった(この映画での芯の強いオフィーリアの人物像は私好きだけど)。そしてオフィーリアの狂気をガートルードに注入しちゃって、私はガートルードは生き延びて大人になったオフィーリアだと思ってるから、あの若さゆえの狂気をこっちに持ってくるのは違うと思う。それを持ってくるなら違う描き方になる。役者として美味しいオフィーリア成分を回すからこの役お願いしますよ、とチャン・ツィイーに持ってったのかな。これやらせるんならオフィーリア出さなくて良かったんだよね、なんか中途半端にハムレットと昔恋仲だったけど先帝に娶られた設定(実母じゃない)にしたんだから。

全てにおいて中途半端で消化不良でした。面白くなる要素はあるのにほんの少しの匙加減が違ってダサダサになっちゃった残念な作品。
ーcoyolyー

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