ささきたかひろ

ビートルズ/レット・イット・ビーのささきたかひろのレビュー・感想・評価

3.0
1987年「ビートルズ復活祭」にて鑑賞。
当時私は高校2年生。前年にビートルズのアルバムが初CD化され始め再評価の機運が高まっていたはず。

世代的に「レット・イット・ビー」といえば「悪霊島」を真っ先に思い出したりもするのでこの映画を観るまでもなく、子供ながらになんとなくレット・イット・ビー」という楽曲自体に暗く重たい雰囲気を感じ取ってはいた。

昨年末、大量の未公開映像と共に伝説の「ゲット・バック・セッション」の全貌が明らかになり、この映画の存在意義も大きく変わってしまったことは否めないし、かなり大胆で作為的な編集があったことも白日の元に晒された。

しかしながら、伝説のグループの解散ドキュメントとして見ればなかなか見事にファンの幻想を打ち消してくれる作用がある。なにしろオノ・ヨーコへの嫌悪感は募るし、ポール・マッカートニーの独善的な態度には自ら屋台骨の鎹を引き抜かんとする破滅的な美学すら感じた。そして終始無気力なジョン・レノンの頭の中には既に決別の鐘の音が響いていたのかもしれないとすら思えてくる。

17歳の純粋な少年だった私はスクリーンの中でいがみ合う4人の姿に号泣してしまった。僕のビートルズが崩壊する姿が悲しくて悲しくて受け入れることが難しかった。

それから35年、晴れて溌剌とセッションを楽しむ多少は希望に満ちている4人を目撃し安堵する日が来るとは、17歳の自分は夢想だにしなかったろう。

長〜い、長いノリツッコミの始まりの作品と捉えよう。
ささきたかひろ

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