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人間は鳥ではないのhorahukiのレビュー・感想・評価

人間は鳥ではない(1965年製作の映画)
3.5
翼をください!!

勝手にマカヴェイエフ特集①
ゴダールやブニュエルから多大な影響を受けたと言われる旧ユーゴスラビアの異質な巨匠の長編一作目。チトー政権下の共産主義に異論を唱えた作品らしい。トンデモな作品を撮った人みたいだけど、本作はまだ大人しかった😂

VHSで見たのだけど、監督のインタビューから始まってウケた🤣本作の主題はその後に現れる催眠術師と中盤くらいの女性がそのまま語ってくれる通りで、人間は非合理的な迷信に騙され踊らされるもの→一見すると潤った(当時の)現代社会そのものも支配階級に騙され踊らされてるんじゃない?催眠術をかけられてるのと同じで…って感じのやつ。鳥のような自由な翼はないよ?鳥だと思わされてるだけだよ?的な。

それなりの地位にあるオッサン労働者が転勤か何かでやってきた新天地。そこで若い美女理容師が実家の一室を貸してあげるところから物語が始まり、親子ほどの年齢もある2人が良い感じになっていく…という本筋。それとは別に男尊女卑な労働者が無実の罪で捕まったり、不倫相手を奥様よりも優遇したりと徹底的にクソっぷりを見せつけるサブストーリー。この2組が交差する階段の演出と象徴性が凄く良い。

酒を飲んで楽しそうに騒ぐ労働者たちが少しのことで乱闘へと発展→死者まで出してしまう冒頭、「今」という地位と生活はありながらも自身を決定づけるアイデンティティと呼べるものを持ち合わせないオッサン主人公、無実の罪を着せられ減給→異議も受け付けられずその吐口を家庭へと向けてしまうクソ野郎等々、ところどころに崩壊を予感させる綻びが見え隠れしている。

子どもたちの社会科見学みたいなシーンがあって、労働者たちが汗水流して工場で働いてるとこを先生が解説しながら見て回るんだけど、「今、目の前に見えるのは肉体労働者です!」とかまるで動物園みたいな紹介の仕方で笑った🤣しかも「公務員などの知的労働者とは違います!」とか本人目の前で言ってるし。煽り具合がすごい!!

そこも含めて「檻の中」であることの皮肉なわけだけど、仰角から真正面へとカメラを動かす象徴性、理髪店での他者に無防備に身を委ねる行為、正妻が敗北する「緑」、モネを思わせるような蒸気と空のモノクロ故の混濁等々、おとなしめながらも面白いところが非常に多く、監督インタビューでもこだわったと語られているモノクロにおける色彩の差異も面白かった。外面と内面のズレを意識させる本作の主題を後押しするかのように、消灯することで見えるという逆転、最高濃度の漆黒こそが内面の会話を可能にするかのような演出が好き。どーでも良いけど、勲章持ちジジイに「俺とあいつどっちが好きなんだ!」と迫られる恐怖よ🤣クオリティ高いから他の作品も楽しみ!
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