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緋牡丹博徒 花札勝負のSEULLECINEMAのレビュー・感想・評価

緋牡丹博徒 花札勝負(1969年製作の映画)
5.0
まず、カット割りが流麗すぎて舌を巻いてしまう。省略を多用するなかで、それが語り経済性や見せかけの過激さに堕落することなく、ひとつの表現としてしっかりと成立している。特に、中盤の藤純子と金原一家の刺客の殺陣のショット→12時を知らせる時計のショット→二千円の束が置かれるショットという繋ぎ方はあまりにも素晴らしすぎてため息が出てしまった。
そして馬車での追走シーンはジョン・フォードかと思うほどの迫力と滑走感に溢れていて、真に運動の興奮を体感させてくれた。高倉健、アメリカ人だったら絶対西部劇でスターになってたよなぁ。
しかし何よりも、ここまで人の死に誠実に向き合った映画というのも少ないと思う。血を流し、目を瞑り、死ぬ。それがかっこよくあれ、悲惨であれ、惨めであれ、とにかく最後まで死を撮り切るという胆力に加藤泰の誠実さを感じる。
また、雪と傘の主題もおもしろかったし、ラスト・ショットがファースト・ショットに連なる鉄道の煙で終わるところも素晴らしい。
加藤泰は初見だけど、一言で言えば彼は"何を撮り、何を撮らないか”をしっかりとわきまえている作家だと思った。
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