滝和也

緋牡丹博徒 花札勝負の滝和也のレビュー・感想・評価

緋牡丹博徒 花札勝負(1969年製作の映画)
4.0
雪の尾張名古屋に
咲く花は、
渡世の義理か、
女の意気地。
仁義を欠いた外道に
緋牡丹のお竜の小太刀
が舞う!

「緋牡丹博徒 花札勝負」

藤純子主演、緋牡丹博徒シリーズ第三弾。熱田勧進博打の貸元、尾張名古屋西之丸一家に草鞋を脱いだお竜。貸元の利権を狙う金原一家との抗争に踏み込むお竜だが、渡世の義理から若狭からの客分、花岡省吾(高倉健!)が立ち塞がる…。

素晴らしいです。毎回ながら、このシリーズ圧倒的に面白い。東映任侠路線の創り上げた侠客の様式美の到達点ですね。渡世の義理か、人の情けか、そのぎりぎりの境界線の中で生きる侠客を描き出してきます。

今作の監督は加藤泰。ベテラン監督故の重みが今作加わり、コメディ的な要素は抑えられ、より格式が高くなっています。前作までの藤純子を盛り立てる色彩による演出は抑えられ、ローアングルを多様し、雪、夜、明暗のコントラストで見せる落ち着きが感じられます。

またダイナミックなカット割に見られる見せ過ぎず、テンポ良く進む巧みな演出。そして複雑な人間関係の構図を伏線回収しながら進むシナリオと正に匠の仕事です。

今作には、偽お竜登場、ロミオとジュリエット的な悲恋物、走れメロスのタイムサスペンス、目の見えない少女との繋がり、助けてくれる男への仄かな恋慕の情、そして任侠における渡世の義理と複雑にシナリオが交差しながらも分かりやすく結末に向かっていきます。文章にすると説明し難い程見所が盛り沢山なんですが作品をみると上手さがわかりますよ(^^)

今作も藤純子様の美しさは突き抜けています。偽お竜の登場での女としての母性や優しさ、高倉健への仄かな恋心と仁義を切り、外道に啖呵を切るその鉄火肌や切符の良さのその美しき二面性。殺陣も益々上手くなってます。

特別出演は高倉健。処作から役を変えての再登板です。やっぱり藤純子様には健さんが似合いますね。朴訥とした純情さが2人の持ち味(^^)。傘を渡す、指が触ると言った所作だけでストーリーになりますからね(^^) 何よりかっこいいですから。健さん無双ですよ。義理と人情の間で揺れる役は真骨頂。ラストの登場は

「よ!待ってました!健さん!」

の声が出るのもわかります(笑)

そして今作で泣かされたのは西之丸の親分、嵐寛寿郎先生です。流石戦前の大スター。その貫禄たるや半端ない。死を覚悟して仁義、そして任侠道を貫く姿は今作の大功労者。その子分を可愛がりながらも、頑固一徹の姿に思わず涙します。

前2作を受けての人気キャラも再登場。道後の熊虎親分、若山富三郎は今回初の殺陣を見せてくれます。窮地に陥るお竜の前に颯爽と現れるシーンは注目です。待田京介の不死身の富士松も復活、こちらはラストの殴り込みに2回目の参戦。相変わらず強い(^^) 大阪堂満のおたか親分、清川虹子さんも1作目から再登板で良い味を出してますね。

兎に角、本当に美しい作品です。このシリーズまだまだ良い作品がありますので引き続き見ていきます(^^)
滝和也

滝和也