台湾の巨匠 ツァイ・ミンリャン監督作品
実在する古い映画館を舞台に、閉館前最後の上映時に繰り広げられる人間模様を描く
特別な事なんか何も起こらないのに、たまらなく切なくなれるというのがとにかく素晴らしい
物語性が希薄な為、お話を追うだけであれば一般的な監督なら10分の短編で作れちゃいそうな映画なんだけど、そこはしっかりツァイ・ミンリャンらしく、たっぷりの映画愛を独特過ぎる表現方法で描き出してくれるからもう最高
映画館の閉館日に立ち会ったことはないけど、その寂れた哀愁は、これでもかというほどにひしひしと感じ取ることができる
いつも主演のリー・カンションすら、まともに顔は映らない
固定されたカメラの長回しで極端な間を使い、始まりから40分間以上ほぼセリフなしで、ようやく会話が始まったと思えば、その後もほぼほぼセリフはない
だけどそれが良い、というかそれだから良い
シュールな演出の巧みさで、じめじめと淀んだ空気感、静かに響き渡る雨音と足音、足の悪い受付の女性の虚ろな表情も最高
観る人は選びまくるだろうけど、これが“映画”だよなぁとしみじみできる傑作
〈 Rotten Tomatoes 🍅79% 🍿73% 〉
〈 IMDb 7.1 / Metascore 82 / Letterboxd 3.9 〉
2021 自宅鑑賞 No.345