backpacker

楽日のbackpackerのレビュー・感想・評価

楽日(2003年製作の映画)
3.0
第35回東京国際映画祭 鑑賞第1作『楽日』

ツァイ・ミンリャン監督が、幼少期の記憶に絡めて映画館への愛を描いた、超スローなムードの不思議な作品です。
ーーー【あらすじ】ーーー
台北の映画館"福和大戯院"は、遂に閉館の日(楽日)を迎えた。
最後の上映作品は、香港映画の巨匠キン・フー監督の傑作武侠映画『血闘竜門の宿』。
フラリと訪れた日本人青年。映写技師の男と受付係の女。マナーの悪い観客。同性愛男性達の逢瀬。かつての映画スター達。

かつての栄光が過ぎ去った映画館は、哀愁と共に幕を下ろすのであった……。
ーーーーーーーーーーーー

発展場の側面を色濃く残す場末の映画館。
この大スクリーンを満員に埋め尽くしたのも、今は昔。
空虚と寂寥に過去の亡霊が同居して、なんとも言えない物悲しさがあります。

なんと本作、固定カメラでの長回しが多用されるため、画面に変化が殆どありません。各人の動きも、動作の繰り返しやスローペースな移動(窓口係の女性は脚が悪いため、自然と動きが緩慢になります)のため、ホントに動かない。
その上、上映中の『血闘竜門の宿』の音、映写機の駆動音、トイレの水音といったBGMは流れるものの、登場人物に目立った台詞が皆無なことも相まって、おそろしく淡々としています。
人と人が交わり合うこともなく、極めて静かに進んでいく物語。ある種の郷愁を感じさせながらも、その物悲しさはかなーり鑑賞するタイミングを選ぶものでした。

……要するに、昼食後の一番眠くなる時間帯に見ては行けなかった!ということです笑
物語の作劇自体に起伏がないため、退屈を感じてしまうのは致し方ありません。
ただ、これが夕方から深夜の時間帯での鑑賞であったなら、話は別だったでしょう。
外で大雨が降っている等の環境要因が重なれば文句なしです。
兎にも角にも、ここ最近の疲労が蓄積している中、集中力も薄れている昼飯後の睡魔ピークタイムでのこの内容は、私の意識を朦朧とさせるに十分な破壊力を持っていたのです……無念。
タバコの火を求めてアレコレ画策する日本人青年の姿と、最後まですれ違い成就しない受付係の女と映写技師男の姿にまとわりつく、やるせなさと孤独感は、見ていて結構胸にくるものがありましたので、もっと違うタイミングで見たかったです……。
backpacker

backpacker