このレビューはネタバレを含みます
第35回(2022年)東京国際映画祭
映画館閉館の日のお話。
受付係の女性が電鍋でつくった桃饅頭のやりとりのシーンが好きです。
きれいな桃色と白色の皮。そしてとても大きい。熱々の皮のはじっこをむしってひと口。あんこも一緒にまたひと口。どうやらおいしくできたようだ。桃饅頭むしる、お茶のむ、桃饅頭むしる、お茶のむ、で食べすすむ。なかなかに食べすすんだある時点で、思い出したようにきれいに半分に切り分ける。
映写技師の男性の仕事場に差し入れ。あいにく映写室にはいないので置いてくる。はたして気がついてくれるのか。
様子を見に行くと桃饅頭はそのまま。思いをめぐらした後、持ち帰る。
ラストシーン。映写技師の男性が退館間際に占い機で占いした後、受付カウンターの電鍋の中の桃饅頭に気がつく。土砂降りの雨の中、電鍋ごとひざに乗せ、急いでバイクで走り出す。それを後ろから見ている女性。
ふたりに台詞の会話がないからこそ、ふるまいが眼の奥に焼きついています。観た後も、思い出しながらゆっくり味わえる一本でした。