ミッキン

裏窓のミッキンのレビュー・感想・評価

裏窓(1954年製作の映画)
4.0
定点観察はハマると抜けられない。
追えば追うほど動向が気になってしまうからだ。
現代のモラルならば覗きは犯罪。70年前の劇中でもそう語られている。
しかし、何と無防備な住人達だろう。カーテンも閉めず、窓は全開放。見てください、と言わんばかりだ。
尤も、時折窓の外を気にする描写やブラインドを下ろすシーンもあるので結果的に物語の展開上のご都合主義と捉えてしまう。妻を殺した後も窓開けっ放しで出掛けたりするもんかね、と野暮なツッコミを入れながらもなんだかんだ最後まで緊迫したシーンに見入ってしまった。
流石はヒッチコック監督、である。
ちなみに気温は28度の設定。クーラーも普及しておらず、暑い夏は風通しを良くする他無かったのだろう。
70年後、最高気温が40度に達するなんて想像もしてなかっただろうな。

圧巻なのはアパートメントを丸ごとセットで作ってしまったそのスケール感。
オープンじゃなく、パラマウントのスタジオ内に建てたというのだから驚く。
しかも電気水道を実際に引いて住めるようになっていたんだとか。
この辺のトリビアはWikipediaにも入れといて欲しい。

音がダダ漏れなビアニストに人招き過ぎなミス・グラマー、犬を野放しにするヤバい夫婦に独身メンハラおばさんなど迷惑系な住人ばかりでそりゃ覗きたくなるわな。

役者に目を向けよう。
主演はアメリカの良心、ジェームズ・スチュアート。ヒッチコック作品では小憎らしい役どころが続く。
足を骨折してる設定だから動きは少ないが、グレース・ケリーとのキスシーンが多すぎて些か嫉妬。
それだけ彼女の存在感は際立っているし、レイモンド・バー(怪獣王ゴジラの記者役でお馴染み)が迫ってくるシーンには「志村、後ろ後ろ!」の心境だった。スコアもその分上乗せしている。
あと、ドイル役の俳優ウェンデル・コーリイの渋い声と青い瞳も個人的に推しポイントだ。
明快な推理をしたように思わせて、全部外れてるという使えない刑事だったが、犯人逮捕の時にはちゃんと現場に駆けつける。妻とクラブで飲み食いしていたはずだけど案外シラフだったし。
まぁ、最近の『VIVANT』も演出の緩さは似たようなもんだけどね。