昼行灯

裏窓の昼行灯のレビュー・感想・評価

裏窓(1954年製作の映画)
3.9
『視覚的快楽と物語映画』で参照されているので。足の動かない主人公が窃視し続けるという設定はまさしく観客の主人公への同一化を確実なものにする効果があるといえる。実際作中の大部分が主人公の部屋からのPOVショットで構成されていた。主人公はほとんど部屋から出ず、代わりに恋人や世話人に行動してもらってるところとかも映画の登場人物が観客の代わりに物語を経験するというところに重なるかも。部屋を暗くするということも映画鑑賞に似ていた。

視覚的~で言われているほど、裏窓は女性蔑視的では無いなと思った。確かに主人公からは金髪のスタイルのいい美女を本筋とは関係なく横目でチラチラ見てたり、独身女性の彼氏がいると仮定した演技の相手役を勝手に自室で引き受けたり、稼ぎのある女は御免だと言ったり、有害男性ムーブが散見される。だがこれらの根本にある窃視という特権性はラストで犯人が自室に入ってくることで崩れる。このとき、主人公はほとんど全ての登場人物からの注目を集めるため、彼はもはや高みの見物をされる側になってしまったと言ってもよい。ラストショットでは、主人公の足の怪我はさらに悪化しており、主人公は悪趣味のために痛い目を見たという見方もできるだろう。くわえてヒロインはヒマラヤ登山の本とファッション雑誌を並行して眺めており、彼らの人生の両立が示唆されてるところからもそこまで女性蔑視は強くないなというか、悪質ではないなと思った。あるにはあるのは事実として

とはいえ高みの見物からのラストの窮地に追い込まれるシーンはとっても興奮した。POVか切り返しショットばかりが続いたなかで、転落シーンの揺れるカメラの激しさ。フラッシュにより明滅する画面(フラッシュで自衛する主人公ダサくて笑った)、これぞまさにフィルム・ノワールなローキーハイコントラスト、犯人が部屋に来るまでの足音(異様に長い)の宙吊り感、あっぱれ🫶
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