桃子

裏窓の桃子のレビュー・感想・評価

裏窓(1954年製作の映画)
5.0
「巨大セット」

ジェームズ・スチュワート&グレース・ケリー。もうこれだけで十分!と思ってしまう傑作サスペンスである。スチュワート演じるジェフはカメラマンだ。主人公がカメラマンの映画にハズレはなし!!(あくまで個人的な感想です)。
何故アパートの窓が開いているかというと、夏で暑いからで、何故ジェフが双眼鏡で隣のアパートの住人たちの部屋を覗き見しまくっているかというと、足を怪我して車椅子生活だから。50年代はまだエアコンなんてない。現在だったら夏は締め切った窓とフル回転する室外機が並ぶだけだ。エアコンのない時代だからこそ成立する映画である。この間レビューを書いた「邂逅」はスマホがあったら成立しない映画だったし、こういうパターンはまだまだ他にもありそう…
室内があまりにも暑いのか、ベランダに布団を持ち出してそこで就寝する夫婦が出て来たりするコミカルなシーンもあるのが興味深い。
監督の完璧主義がわかる裏話を読んだ。ヒッチコックは、広いスタジオに庭付きのアパートをまるごと建てた。50人もの作業員が6週間かけて作り上げたそうだ。それぞれ部屋に調度品を置き、俳優さんたちに肌色のイヤホンを装着して指示を出しながら撮影したという。前代未聞の巨大なセットが珍しくて、国内外からの見学者が後を絶たなかったとか。私はてっきりどこかのアパートを借り切ってロケをしたのかと思って見ていたから、ほんとにびっくりである。
ジェフが双眼鏡では不足になって、カメラの望遠レンズを動員してウォッチングを続けるシーンはテンションがあがった。私も望遠レンズを持っているけれど、かなり大きく見えるのだ。レンズの向こう側で展開するターゲットの男の謎の行動に、ジェフと一緒になってやきもきしてしまう自分がいた。あの男は、本当に自分の奥さんを殺して地面に埋めたんだろうか??(あの俳優さん、テレビで見たことがあるなあと思ったら、「ペリー・メイソン」や「鬼警部アイアンサイド」に出ていたレイモンド・バーだった)。
とはいえ、だんだんそんなことはどうでもよくなってしまう感覚もあった。とにかくグレース・ケリーのエレガントさに目を奪われ、素敵なファッションに釘づけになり、私もあんな装いをしてみたいものだなんて思ってしまう有様。そんな彼女が、終盤で思わぬ行動に出るから驚いた。はらはらどきどき感を途切れさせないストーリーは、ほんとうに秀逸である。
ネットで検索して「ヒッチコック映画 ベスト10」を見つけたことがある。「裏窓」は第2位にランクインしていた。ちなみに第1位は「サイコ」である。これは誰もが納得じゃないかなあ。
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