けんたろう

ドラキュラのけんたろうのレビュー・感想・評価

ドラキュラ(1992年製作の映画)
-
さらば、ビッチ。


黒澤明『影武者』のやうに鮮やかで且つ劇烈なる赤色の画が強く印象に残る。然うして影、影、影。ヘルツオクの『ノスフェラトゥ』が幻想的で美しい気味悪さを湛へてゐたのに対し、本作は赤と黒のはつきりとしたイメエジを以て強烈に怪奇を描出してゐる。

物語りも亦た面白い。
主人公が幾人も居り、ホラア、ロマンス、アクシヨンとジヤンルも多岐に渡つてをる。中でも、ドラキユラ伯爵の悲恋や苦悩を惜しまずフイチヤアしてゐるのは、先の『ノスフェラトゥ』に無かつたものなので、私しに取りては新鮮であり、又た満足である。
たゞ、途中からアドベンチヤアものに移り変はつた際には、やゝ性急な感が有つた。聞く話しに拠ると、本作は原作のストオリイに可成り忠実らしい。となると、此の感を覚えしむるのは、原作の全頁を映画として百二十分余に収めるのが困難であつたからなんかしら。

豪華なキヤスト。二転三転する物語り。然うして鮮烈なる表現。改めて、コツポラ作品の面白さを目の当たりにした次第である。