efn

戦艦大和のefnのレビュー・感想・評価

戦艦大和(1953年製作の映画)
4.2
 戦後八年目の戦艦大和。画面から科白にいたるまで薄暗く、異様に重々しい雰囲気のある作品。甲板上はいつも闇夜で乗員の足元は見えず、艦橋は巨大な墓標のようにそそり立つ。乗員は常に自分の人生の意義や残された恋人について語り、気を尖らせている。
 坊ノ岬沖海戦も乗員の大量死を淡々と描くだけで特に反戦を気取る科白はない。機銃指揮をとっている途中で弾に当たり絶命する指揮官、弾薬を運んでいる途中で弾にあたり床に倒れる兵、傾斜し虫のように甲板に張り付く乗員たちと、それを藁のように薙ぎ払う敵機。助けてとも痛いとも言わず、ただ無言で死んでいく姿が恐ろしい。
 特撮、セットの規模では七年後の太平洋の嵐に及ぶものではないし、反戦映画と観るにしても兵隊やくざの私的制裁にかなうものではない。しかし、劇的な脚本や視覚効果に頼ることなく、戦争の特殊な状況を空気で捉えた作品はこの映画の他にはない。
efn

efn