YasujiOshiba

シシリアンのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

シシリアン(1969年製作の映画)
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日本版BD。23-160。劇場で見たのは中学生のころ。印象に残っているのは口琴のビヨーンという響き。シチリアの楽器でスカッチャペンシエーロと呼ばれるもの。モリコーネの作曲だからという以前から頭の中に刻み込まれたのだけど、映像の方はさっぱり覚えていない。なんか飛行場があったよなという程度。まあ、中坊だったからな。

今回は刑事物が見たいというなぎちゃんのリクエストで、手に入れてあったBDを取り出してきて鑑賞。いやあ、こんなに面白い映画だったんだ。フランス語だけかと思ったら、イタリア語もばんばん出てくる。それやそうなんだ。ジャン・ギャバン演じるヴィットリオ・マナレーゼはシチリア出身のギャングなのだから。

そのマレーナ一家は、フランスで表向きは真っ当な生活を営みながら、裏では泥棒家業。そろそろ引退してシチリアの故郷に錦を飾ってやろうというボスという設定。だから彼の家族もイタリア語を話すし、彼のところに来る盗品の買取屋もイタリア語を話す。この男、どこかで見たことがあるなと思えば、フェリーニが発見したレオポルド・トリエストエではありませんか。

さらには、アメリカのギャング仲間の友人でこれまたイタリア語を話すアントーニオは、なんとイタリアの往年の大スター、アメデオ・ナッザーリ(1907-1979)。ジャン・ギャバン(1904 - 1976)より3歳若いだけで、映画を撮ったころには二人とも60代。ということは今のおいらと同年代なんだけど、ずっと気品のある歳のとりかたをしているよね。着ているものがよいからだろうか。

この映画を見た時はモダンだなという印象があるんだけど、今見るとなんとも懐かしい。ハイドロのシトロエンDSや2馬力こと2CVが走っているのが実に楽しい。

殺し屋を演じるドロンのヤバい感じや、刑事役で禁煙中のヴァンチュラの演技も最高。タバコを咥えているのに火をつけさせないのよね。ということは、何かが起こったらタバコの火をつけるんだろうなと思わせる演出がいかしてる。

いやほんと、脚本が本当によく練り込まれている。だいたい一稿には刑事も女もいなかったという。それじゃ売れないと、刑事が登場し、おれの女も出せと米国のプロデューサ、ダリル・F・ザナックがねじ込んでイリナ・デミックのジャンヌの役ができたという。

思い通りに行かなくて、なんとかしているうちに、めちゃくちゃうよくできた娯楽映画ができちゃったという話もおもしろい。

BDで見直してよかった。映像も音もよい。堪能しました。
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