猫脳髄

怪奇!魔境の裸族の猫脳髄のレビュー・感想・評価

怪奇!魔境の裸族(1973年製作の映画)
2.9
いわゆる食人族を扱った嚆矢に位置づけられるウンベルト・レンツィによるオリエント・エクスプロイテーション映画。ただし、イタリア語原題は「野生のセックスの国」、英題は「深い河から来た男」である。演出上、食人が特に意識されたものではない(描写のひとつに過ぎない)し、レンツィ自身もその点は明言している。

ただ、製作のひとりにイタロ・ホラー界のハッタリ王、オヴィディオ・G・アソニティスがいたことが重要で、本作の成功を背景にアソニティスがレンツィに食人テーマの新作を持ちかけたところ断られたため(※1)、お鉢が回ったのがルッジェーロ・デオダードである。彼の「カニバル/世界最後の人喰い族」(1976)を契機に、本格的なカニバル・ブームが到来することになる。

閑話休題。

本作自体は60年代のいわゆる「モンド映画」の系譜にあるロマンス仕立てのエクスプロイテーション作品である。タイに降り立ったイギリス人(※2)カメラマン役のジャンル俳優アイヴァン・ラシモフが、河川での撮影中に先住民に拉致されてしまう。奴隷扱いだった身分から次第に認められ、族長の娘メ・メ・レイ(※3)と祝言をあげる。愛を育むふたりの前に、突然の病と凶暴な食人族が立ちはだかり…という筋書き。

白人と先住民の娘とのロマンスという型どおりの展開で、オリエント・エクスプロイテーションらしく、レイのヌードシーンなど濡れ場をふんだんに盛り込んだ。敵対する食人族による襲撃シーンなど多少のゴア表現も見受けられるが、ちょっとしたスパイス程度である。邦題やサムネイルに騙されて見ると、肩透かしこの上ない。

※1 レンツィ自身も結局参入して「食人帝国」(1980)などを製作する
※2 イタリア語を話す先住民に「英語が話せるのか!」とイタリア語で返すのには苦笑してしまうが
※3 ビルマ系とイギリス系のハーフで、何と76年のデオダード作品にも出演しているらしい。ラース・フォン・トリアーの長編デヴュー作にも登場するらしく、興味深い女優
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