不在

アリスの不在のレビュー・感想・評価

アリス(1988年製作の映画)
4.0
目を閉じなきゃ何も見えないと、少女は我々に語りかける。
時には心の目で世界を見ることが大事だというメッセージだ。
実際に私達は目に見える物だけを頼りに生きているせいで、自分の中に幾つもの世界が存在していた事を忘れてしまった。
そんな私達に、少女は"目"を貸してくれる。
自分の夢の国へと、我々を連れて行ってくれるのだ。
しかし大人である我々は、そこがあまりにもエロティシズムなフロイト的メタファーに満ちている事に気が付いてしまう。
大人への憧れや、性的興味、成長に伴う痛み。
長い眠りから覚めた彼女はもうアリスではなく、ハートの女王へと変貌している。
純粋無垢な生娘から、少しだけ大人になってしまったのだ。
この少女も我々と同じくおとぎの国へのチケットを失った。
目に見えない物を信じて生きる日々は、今日で終わりなのだ。
不在

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