とり

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンのとりのレビュー・感想・評価

3.7
クリストファー・ウォーケン出演作の中でもこれはなぜかイマイチ魅力を感じることができなかった一本。
おお、思ってたより出番多そうやね、ウォーケン。とニッコリ顔でしたが中盤からぱったり姿を消してしまいました。やっぱりな…。でも最近のウォーケンはヘンテコな役柄ばかりだったから、こういう普通っぽいお父さん役は逆に新鮮。それでもさすがウォーケン、とうならされる一筋縄ではいかないちょっと変わったお父さん像でしたが。

オープニングの影絵のようなアニメが面白くて、追いつ追われつサスペンスフルでどこか007的な印象。実際の内容は軽いコメディって感じで追われるドキドキも追うイライラもさっぱりなかったけど。
伝記映画ってことを頭の片隅に置きながら観ると、へぇーふぅーんほぉーって感心できたりして興味深いところ多し。実際には小切手の偽造技術に優れた若者を普通に捜査して逮捕しただけなんでしょう。映画として脚色が施されてるのでなければかなりウソくさいエピソードも多い。まぁ面白けりゃ何でもいいんですけど。

ウォーケンだけが目当てではあったけど、やっぱりディカプリオはいい演技しますね。チャラチャラしたハンサム顔のせいでかなり過小評価されていた俳優さんだと思う。当時の若手の中では純粋・幸薄そう・孤独・繊細系の演技をさせたら相当な位置にいると信じて疑っておりませんでした。
今回は繊細な部分とどこか少年のような憎めない可愛らしさがとても活かされている。立派な脇役に囲まれた中で猛烈に輝きを放っています。

追う役であるトム・ハンクス。今回はかなり控え目演技で気にならない存在だったので良かった(笑)この人が主役の時の演技ってもうどうしようもなく押し付けがましく感じるしハナにつくし、苦手なんですよね。ファンの方ごめんなさい。恐らく役作りが物凄いんでしょうね。いつも作り込みを感じます。80年代のコメディ作品、特に「スプラッシュ」での彼は大好きですが、最近のシリアス路線はちょっと受け付けない。これはもう個人的な好みの問題なのでどうしようもありません。が、今回は本当にジャマに感じなくてよかった。
ところでトム・ハンクス演じるFBI捜査官が何度か発してたジョーク(ノックノック⋯ドアをトントンのくだり)はっきり言ってどこが面白いのか全然わからず。

全体の構成としては上手くまとまってるし軽いメッセージ性も感じられるけど、どうも淡々としすぎていて弱い。物凄い山場もちょっとした山場もなく、するすると進行していく感じ。主人公の飄々とした雰囲気を出すための演出なのかもしれないけど、ちょっとムダも多いように思いました。
国家試験合格のタネ明かしはあんなに引っ張るほどのものでもなかったし、結婚相手の女性との心のつながりも全然感じなかった。そういえばこの女性の父親役はマーチン・シーンですが、ウォーケン同様どこか狂気じみた雰囲気があるいい俳優さんですね。現実には息子がイカレてますが(笑)
ウォーケンとは若い頃に「デッドゾーン」でも共演してますね。今回は直接2人同時に出演するシーンがなくて残念でした。

60年代が舞台ですが建物・衣装・音楽など、徹底していて完璧にその世界にのめりこめます。これは凄い。おとぎ話風の映像を狙ってる風にも感じます。家のテレビでくつろぎながら観て楽しめる軽い口当たりの映画でした。
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