佐藤克巳

宗方姉妹の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

宗方姉妹(1950年製作の映画)
5.0
新東宝が文芸大作路線として「細雪」と並び、松竹から小津安二郎監督を招き大仏次郎原作の本作を製作して成功を収めた傑作。大の猫好きの大仏を投影したと思われる夫山村聰の人物像は、成瀬巳喜男「雪崩」夫のニヒリストな性格を帯びているとすると、完璧過ぎる良妻田中絹代の重圧感に耐えきれない日々が、日記に残す田中の永遠の恋人上原謙帰国から堰を切った様に転落の道を歩み、田中がバーの経営資金を上原から受けた事で、田中からの離婚を迫られる機会を作り出そうと試みたが、たじろがない田中に怒りのビンタを浴びせた。上原のプロポーズを受けた田中に嘘の再就職を告げ、別れ、やがて自爆した。妻田中にとり夫山村の死は衝撃で、上原に永遠の別れを告げた。また同時に、上原を慕っていた未亡人高杉も去った。新しいものを美徳とする田中の妹高峰秀子には、この事態を理解できないであろう。
佐藤克巳

佐藤克巳