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ラ・ヴァレのSariのレビュー・感想・評価

ラ・ヴァレ(1972年製作の映画)
3.7
2021/02/19 DVD
【奇想天外映画祭2020】プログラム作品

処女の地「ラ・ヴァレ/谷」を目指して、未知なる狂気の旅が始まる…
ドラッグに溺れる男と女を描いた『モア』に続く、バルべ・シュローデル監督長篇第2作品。
未開の地を舞台に、極楽鳥の珍しい羽根を探し求めていたパリのブルジョワ夫人は、若い冒険家たちと出会う。彼らの生き方に心惹かれた夫人は、探検隊とともに地図に空白を残した処女の地を目指す。
オーストラリア領パプアとニューギニアの奥地でオール・ロケを慣行した映像は、土着民の原始的な祭礼をはじめ(特にこの祭礼のシーンは映画のために撮影されたというよりもドキュメンタリーのよう)幻想的な密林の表情を見事に描き出している。
荒々しい密林の映像はヴェルナー・ヘルツォークの『アギーレ』『フィツカラルド』、辺り一面におびただしい数の土着民が埋め尽くす祭礼シーンは『コブラ・ヴェルデ』を思い出させゾッとする。
しかし、ひとりの女性が普遍的な日常から逃避、偶然秘境を目指し‘’生への喜びに目覚める‘’冒険という本作の本質的テーマと似て非なるものに感じる。
ブルジョワが、大自然でテントを張り衣食住を営むのと同じようにフリーセックスをする若者達のヒッピー文化に出会った事で、お金で得られない幸福の価値を知り、又人種や性別、文化や固定概念など全ての垣根を取り払い、何の縛りもない原始に還ることで得られる精神の安らぎを愛しむべきもののように描いている。

ヴィヴィアーヌ役はジャック・リヴェットに見出され、数々の才能溢れる監督達(ファスビンダーやブニュエル)との作品に起用されたピュル・オジェ。ガエタン役は『アイドル達』に続きピュル・ロジェと共演、野性味溢れる演技のジャン=ピエール・カルフォン。音楽は『モア』同様ピンク・フロイドが担当。
パリ郊外のスタジオで完成済みの映像を見て曲のアイディアを浮かべてレコーディング。その多彩な魔性のメロディは、永遠に俗世に戻れないような雰囲気を見事に演出している。
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