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ラ・ヴァレのROYのレビュー・感想・評価

ラ・ヴァレ(1972年製作の映画)
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処女の地「ラ・ヴァレ/谷」を目指して、未知なる狂気の旅が始まる・・・

撮影:ネストール・アルメンドロス
音楽:ピンクフロイド『雲の影』

■ABOUT
ドラッグに溺れる男と女を描いた『モア』に次ぐ、バルベ・シュローデル監督長編第2作品。『モア』の死への旅立ちというテーマから、監督が次に選んだのは、ひとりの女性の生の歓びの発見に至る旅路を描き出す。

未開の地を舞台に、極楽鳥の珍しい羽根を採し求めていたパリのブルジョワ夫人は、若い冒険家たちと出会う。彼らの生き方に心惹かれた夫人は、探検隊とともに地図に空白を残した処女の地を目指す。夫人は富を投げうち、規則や制約から解放されてアダムとイヴのように裸になって秘境の谷、緑の楽園を旅していく。まるで彼女の肉体からはある神秘の力が発散されたかのようだった…。

撮影は、トリフォー、ロメール監督作品などで有名なヨーロッパ屈指のネストール・アルメンドロス。「西洋文明から最も遠い場所」オーストラリア領パプアとニューギニアの奥地でオール・ロケを慣行した映像は、土着民の原始的な祭礼をはじめ、幻想的な密林の表情を見事に描き出している。

ヴィヴィアーヌ役は、ジャック・リヴェットに見出され、才能溢れる数々の監督たちの作品に起用されたコケティッシュな表情で観客を魅了する『北の橋』のビュル・オジエ。ガエタン役は、『アイドルたち』に続きビュル・オジェと共演、野性味溢れる演技のジャン=ピエール・カルフォン。

音楽は、『モア』同様ピンクフロイドが担当。パリ郊外のスタジオで完成済みの映像を見て曲のアイディアを浮かべてレコーディング。その多彩な魔性のメロディは、永遠に俗世に戻れないような雰囲気を見事に演出。

日本未公開のまま35年の時が過ぎたが、虚無感漂う曲と映像は絶妙にシンクロ、そのメッセージ性溢れる作品は未だ色あせることがない、いま蘇る傑作だ!

■STORY
ヴィヴィアーヌは、フランス領事と結婚している平凡だが幸福な若妻だった。ある日、彼女は趣味の骨董品蒐集のためにニューギニアに出かけた。山の小さな町で買い物をしていたとき、彼女はオリヴィエという青年に出会う。オリヴィエは、探検隊の隊長ガエタンとともに地図の上でも未だに空白の幻の土地にある谷を発見するため、旅に出ることを彼女に打ち明けた。強く好奇心を刺激されたヴィヴィアーヌは、同行することを決意する。探検隊は、必要最少限の荷物だけを持って勇気を武器のかわりに、凍てついた峠を越えて、未知なる暗い密林へと進んで行った…。

■NOTES
「60年代のヒッピー・ムーヴメントは、チャールズ・マンソン一派のシャロン・テート殺しを契機に一斉に店じまいがはじまった。ヒッピー・コミューンの自然回帰思考を文明から遠く離れたパプア・ニューギニアを舞台につきつめてみせた問題作がフランスの映画監督バーベット・シュローダーの『ラ・ヴァレ(谷)』(1972)だ。地図には〈Obscure by Cloud〉としか記されていない、雲、霧に閉ざされて、おいそれとは人が近づけない場所への踏査行だ。ピンク・フロイド担当のサントラ盤は、この地図上の名称からきていて、邦題は『雲の影』であった」滝本誠

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雲の影1972年発表の作品です。バルベ・シュローデル監督が『モア』に続いて彼らに音楽制作を依頼した1972年公開の映画『ラ・ヴァレ』のサウンドトラック。レコーディングはツアーの合間を縫う形でパリのシャトー・ド・デルヴィーユで行なわれ、わずか13日という短期間で完成させています。本作においても彼らならではの優れた映像喚起力が発揮されており、アルバムとして成立させているのは流石です。多彩な楽曲が並ぶなかデヴィッド・ギルモアが作詞作曲したブルージーな「大人への躍動」やロジャー・ウォーターズ作の「フリー・フォア」など聴きどころは多いです。全英チャートで6位、全米46位という成績を残した。幻想的なジャケットのアートワークはヒプノシスによるものです。

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処女の地「ラ・ヴァレ/谷」を目指して、未知なる狂気の旅が始まる・・・。「西洋文明から最も遠い場所」オーストラリア領パプアとニューギニアの奥地でオール・ロケを慣行した映像は、土着民の原始的な祭礼をはじめ、幻想的な密林の表情を見事に描き出している。未開の地を舞台に、極楽鳥の珍しい羽根を採し求めていたパリのブルジョワ夫人は、若い冒険家たちと出会う。彼らの生き方に心惹かれた夫人は、探検隊とともに地図に空白を残した処女の地を目指す。夫人は富を投げうち、規則や制約から解放されてアダムとイヴのように裸になって秘境の谷、緑の楽園を旅していく。まるで彼女の肉体からはある神秘の力が発散されたかのようだった…。

■COMMENTS
先日Pink Floydの『Obscured by Clouds』(国内盤初盤、EOP-80575)を買った。Harvest原盤を使用しているからか、音が凄まじかった。冒頭のシンセから心を掴まれっぱなしだった。

本作と同じくバルベ・シュローデルの『モア』は、今年「ミムジー・ファーマー特集」として、『渚の果てにこの愛を』と共にリバイバル上映されていた。

『ラ・ヴァレ』は、2020年の夏、新宿「K’s cinema」で開催された「奇想天外映画祭」でも上映されていた。

2010年の爆音映画祭のラインナップなかなかヤバくないですか?〈http://www.bakuon-bb.net/music2010/program.php〉
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