Mikiyoshi1986

ラ・ヴァレのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ラ・ヴァレ(1972年製作の映画)
3.7
対となる前作「MORE」を観たのもかれこれ10年以上前になりますが、バルベ・シュローデル監督が再びPINK FLOYDとタッグを組んだフレンチ・ヒッピー映画。

アフリカ・ニューギニア島の奥地に存在する人跡未踏の秘境を目指す小細工無しのリアル・アドベンチャー!
フランス領事官の妻で工芸品の買い付けをするブルジョワマダム・ヴィヴィアーヌは偶然出会った冒険家たちに触発され、彼らと共に未知なる「ラ・ヴァレ=渓谷」を探し求める"オデッセイ"を体現します。

PINK FLOYDも後に世界最高峰の歴史的傑作となる「狂気」の制作と並行して本サントラを手掛けており、そのグルーヴは我々を幻想的な次元へと誘ってくれます。

当時はフランス五月革命やベトナム反戦運動、ロックはサイケからプログレという新段階に到達し、ドラッグとセックスのボーダーは緩み、ヒッピー・ムーヴメントは世界中で最盛を迎えていた時期。
西洋の近代文明下で凝り固まった既成概念を氷解させ、俗世とは逸脱した原始世界に触れることで人と人の調和、人と世界の調和を映し出します。

ただ、シュローデル監督は闇雲に若者をアフリカに駆り立てヒッピー・カルチャーを煽動しよう!というわけでは決してなく、前作「MORE」ではドラッグによる精神解放を描きつつもその代償として破滅を伴う危惧を説きました。

本作でも例えば、性解放とは快楽の為のフリーセックスを指すのではなく、愛を広く多く共有し合う前提のセックスであることや、
我々が享楽的に土着民と同化することは単なる観光客程度にすぎず、今まで培った一切の価値を棄てなければ求める真実には到達できないなど、次第に短絡的になりつつあるヒッピームーヴメントの真の在り方を諭します。

全編アフリカオールロケを敢行し、各部族が大集結する祭典シーンはとにかく圧巻!
後半の祭儀のシーンでは村の長らしき人の「わしは誇りに思う!映画というものでわしの名を世界の果てまで伝えてくれる」という発言など、半分はもう探検ドキュメント。

Valley(谷)を意味する「La Vallee」に彼らは果たして辿り着くことができるのか。
そもそも彼らが探し求める「谷」とは一体何を意味するのか。
ホドロフスキー「HOLY MOUNTAIN」っぽいノリでどうぞ!いや、違うか。
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